大成したオンラインRPG~チャットのPSOと完成されたFF~【通信ゲーム・ヒストリア 第4回】

テキスト: 多根清史

それでは前回の最後に予告した通り、『ファンタシースターオンライン(PSO)』について、お話ししていきましょう。

セガのドリームキャストは、メジャーな家庭用ゲーム機としては、初めて標準で電話回線を介した通信機能を備えたことは前回もお話ししたとおり。そのドリームキャスト用として、日本で初めて商業的に成功したオンラインRPGこそが、2000年12月に発売された『ファンタシースターオンライン(PSO)』でした。

開発したのは、セガ社内の開発チームであるソニックチーム。その名の通り、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(『スーパーマリオブラザーズ』に対抗して作られ、アメリカでは大ヒットを記録したアクションゲーム)の生みの親である中裕司氏らを中心としたチームでした。

「はじめまして」のコミュニケーションを大事にした『PSO』

『PSO』のストーリーは、はるか未来、惑星ラグオルを舞台に起きた異変を調査するために冒険者達が派遣され……と、セガのRPG『ファンタシースター』をベースとしたもの。とはいえ深い繋がりはなく、前作を知らなくてもすんなり遊ぶことができました。

このゲームは、「『はじめまして』から始まるRPG」のキャッチコピーで謳われているように、人と人、プレイヤー同士のコミュニケーションがとても充実していました。
キーボードがあるパソコンと違って、十字キーやボタン等しかないゲーム機は、文章を打ち込むのがかなり面倒です。その点『PSO』では、あらかじめ用意された単語を選んで発言する「ワードセレクト」を用意。「はい」「いいえ」「喜んで」などを組み合わせて簡単な文章を作れるうえに、それを自動的に翻訳してくれて(ソフトの言語設定に沿って表示される)、言語の壁を越えて海外勢と意思疎通も可能だったのです。色や形を組み合わせたシンボルを使う「シンボルチャット」もあり、好きなだけ「はじめまして」を行うことができました。

チャットのほかにも、多くのオンラインRPGではプレイヤーの顔となるキャラクターの見た目の作り込み=キャラクターメイキングが重要。『PSO』ではその細かさもかなりのもので、まず「種族・性別」と「クラス」(職業)の組み合わせを9通りからセレクト。それを基に背の高さや色合い、声など様々な要素をいじることができ、一日中悩むことができるほどでした。

『PSO』の弱点はアップデートだった

ゲームの本編は、前々回にご紹介した『ディアブロ(Diablo)』とほぼ同じ。キャラクターはダンジョンの奥をめざして歩き回り、ロックされたゲート(関門)を見つけたら周囲の敵をせん滅する。あらかじめゲームパッドの各ボタンにセットしておいたアタック(攻撃)やテクニック(魔法)、アイテムなどを使い分けて道が開けたらまた進む、のくり返しです。

『PSO』はオンラインRPGながら、回線に繋がないオフライン向け=1人用モードでのボリュームが充実していました。まずひとりプレイで操作に慣れてしっかりレベルを上げてから、オンラインにデビューが可能。おかげで、難しい印象のあったオンラインゲームのハードルが下がったわけです。
筆者も『PSO』で初めてオンラインRPGに触れたひとりですが、電話回線の向こう側にいる人たちと繋がることがなんと楽しかったことか……。チャットがあまりに楽しくて、クエスト(冒険)に行かず、朝までだべり倒した経験は数えきれません。クエストを終えてからアイテムの分け前を話し合うのも初体験で、すべてが新鮮でした。

PSOの新しさはドリームキャストというマイナー気味のハードながらもブームを起こし、多くの感性の鋭いクリエイター達を魅了しました。その代表格が、漫画『ファイブスター物語(FSS)』やアニメ映画『花の詩女 ゴティックメード』でも知られる永野護氏です。

ゲームの愛好家としても有名な永野氏は、PSOのいちプレイヤーとして参加していました。その熱心さは多忙のなかで自ら「FSSロビー」を主催し、毎日押し寄せる200人以上のプレイヤーを親切に手引きしていたほど。当時FSSの休載が相次いだこととの因果関係は定かではありませんが、壮大な物語を描く作家をして「まったく知らない世界」と言わしめるほど、PSOの体験はワクワクとドキドキに満ちていたのです。

そんな初めて尽くしの『PSO』でしたが、その後はプレイヤー人口を大きく増やすことはなく、他社のオンラインRPGに押され気味となりました。その主な原因は、アップデートを前提としていなかったこと。今どきのゲームのように後からダウンロードにより内容を更新・追加することは想定していなかったため、いつまでもゲームを楽しむといことができなかったのです。その限界に突き当たったのも「ゲーム専用機向けオンラインRPG」という未開拓の領域に挑んだからですかね。

世界初のゲーム専用機向け MMO『FINAL FANTASY Ⅺ』

PSOは最大4人という比較的少人数で遊ぶ、いわゆるMORPG(複数プレイヤー参加型オンラインRPG)でした。これに対して日本初、いや世界でも初のゲーム専用機向けMMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)となったのが、スクウェア・エニックスの『FINAL FANTASY Ⅺ(FF11)』でした。

本作は、他のゲームとはケタ違いに多くのプレイヤーが1つの世界に参加して共にプレイするという、前々回の『ウルティマオンライン(Ultima Online)』と同じタイプのものでした。はじめはPS2専用ゲーム(PlayStation BB Unitという周辺機器が必要)として2002年5月にスタートし、後にWindowsにも対応。

日本で『ウルティマオンライン』は一部のマニア向けゲームに留まりましたが、『FF11』は全盛期のアクティブアカウント数(実際にプレイしている人数)は50万人以上、収益もたった1本でスクエニから出された他のゲーム全ての合計に匹敵するほど。オンラインゲーム全体の中でもかつてない大成功を収めたのです。

なぜ大ヒットしたのか。その1つは長年の歴史ある『ファイナルファンタジー』シリーズのブランド力。外伝ではなくナンバリングタイトル(正統続編)とされたことも驚きでしたが、実際に物語もシリーズ初期のようなファンタジー色の強いものに回帰していました。それに加えて、後の作品では影が薄くなっていた「クリスタル」に世界の命運を左右する大きな役割が与えられ、昔からのファンに「懐かしいな」と思わせる面があったのです。

『FF11』の18年間、それは改良の積み重ね

もう1つの理由として、最初からゲームの完成度が高かったことが挙げられるでしょう。発売から20年近く経つ今であってもグラフィックは美しくて古びていません。そしてなにより、戦闘システムが時代の先をいっていた。敵がフィールド上をうろつき、こちらが接触すると直ちに戦いとなるシームレスバトル方式。そして敵モンスターの敵対心(ヘイト値)を上げることで特定のプレイヤーに攻撃を引きつけ、他の味方をかばうスタイルはとっても斬新でした。

ゲームの完成度が高かったのは、参考になるゲームがあったからでした。それが海外MMORPGである『エバークエスト(Ever Quest)』です。シームレスバトルやヘイト値のほか、数十人で伝説級の強力な敵と戦う「レイド」まで全く同じ。『FF11』の開発を率いた坂口博信さん(『FF』シリーズの生みの親)が語った『エバークエスト』にハマりすぎて、さらに主要スタッフに会社命令でプレイさせてから、その体験を元に……というエピソードはかなり有名でしょう。

しかし『エバークエスト』の日本上陸は2003年、つまり『FF11』の数ヶ月後のこと。しかも『FF11』はオンラインRPGとしては珍しく練り込まれたストーリーや、日本人好みのするキャラクターデザイン。その上に重厚なシーンや笑える小ネタも織り交ぜられ、まさに『FF』シリーズの魅力を加えていました。そのため、『FF11』の優勢は揺るがなかったのですね。

PS2ゲームとしては類を見ないほど広大なマップや、キャラクター育成の奥深さ、虹やオーロラが揺らいだりする天候の変化もあり、本当に旅をしているよう……でしたが、旅には苦楽をともにする仲間が必要。『FF11』の戦闘バランスも「仲間」ありき、つまり敵の強さはパーティを組むことが前提にされていて1人ではキツすぎましたが、出会いをサポートするシステムがまるでなかったのです。

筆者もサービス開始直後に参加した1人でしたが、広場のあちこちで仲間を募集する人を見かけたのを今でも覚えています。『FF11』には戦士や白魔導師など22の「ジョブ」(職業)があるんですが、ジョブにより「戦闘でどれだけ役に立てるか」が決まっていたため、それ以外のジョブだと声さえ掛けてもらえない……、と知ったのもゲームを始めてからずいぶんと経ってからでした。

そうした困難を乗り越えた初期プレイヤー達。そして、ユーザーの声に耳を傾けてシステムやゲームバランスを改良していったスクエニ運営。みんなの力を合わせた結果が、18年目を迎えた今日もなおサービスが続いていて、1人でも遊びやすいという好評に繋がっている。そんな『FF11』は通信ゲームの歴史の重要な1ページでありつつも、第一線で活躍する現役なのです。

ということで、今回はここまでにしておきましょう。
次回もお楽しみに。


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