人気タイトルの最新作『ストリートファイター6』が世代を超えて愛される理由

対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』が発売されてから、はや数カ月。リリース直後には販売本数が100万本を突破し(2023年7月時点では200万本突破)、PCゲームのプラットフォームSteamの対戦格闘ゲーム史上最大の同時接続数を叩き出したりと快進撃を続けています。

すでに対戦格闘ゲームが誕生してから30年以上が経過し、人気にも浮き沈みがありました。『スト6』(略称)が大いに盛り上がるまでには、歴代シリーズが積み重ねてきた蓄積があり、対戦コミュニティが世代を超えて紡いできた人と人との繋がりがある……。そんなわけで、これまでの『ストリートファイター』シリーズの歩みを振り返ってみましょう。

ライター:多根清史

対戦格闘の基本を確立した『ストリートファイターⅡ』

初代『ストリートファイター』が誕生したのは、1987年のこと。「主人公達が世界を旅して、各地の強豪たちと戦う」ストーリーや、「2人のキャラクターが対決し、互いの体力ゲージを削りあう」、それに「コマンドを入力して必殺技を出す」といった基本は、本作ですでに確立。

ただし、非常に操作がしづらく(圧力センサー付きボタンだったので非常に疲れる)、まだまだ面白い格闘アクションゲームの域を出ていませんでした。

本当の出発点と言えるのが、続編の『ストリートファイターⅡ』(1991年稼働)でしょう。基本操作は8方向レバー+6ボタン(初代の後期バージョンから引き継ぎ)に移行し、コマンド入力のしやすさも改善。そして防御システムも洗練され、通常技で体力が削られなくなったため「適当にガチャ押ししていれば勝つ」(ないしCPUにゴリ押しされる)こともなくなりました。

最大の変更点が、個性豊かな8人のキャラクターを自由に選べるようになったこと。そこに表現力の向上も加わり、グラフィックとともにゲーム性も向上しました。各キャラ毎に異なる細やかなモーションは、1フレームごとに「殴る」や「蹴る」の駆け引きを生じさせ、対戦の深みを増したのです。

『ストⅡ』(略称)のスゴさは、そうした対戦の魅力を一気に知らしめたことです。もともと本作のようなアーケード(ゲームセンター向けゲーム)は「100円玉を入れて、どこまで長く遊べるか」が重視されるはずでした。それが「相手が強ければ1分も遊べない」対戦格闘ブームに取ってかわったことは、どれだけ底抜けに面白かったかを物語っています。

さらに本作は『ストリートファイターII’(ダッシュ)』や『ストリートファイターII’ TURBO』といった続編が次々と登場。どれもプレイできるキャラはほぼ同じで、ゲーム速度やキャラ同士のバランスを調整したマイナーチェンジ版です。当時は基板を出荷した後にソフトの変更ができなかったため「別作品」となったわけですが、今でいうバージョンアップの先取りといえます。

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『ストリートファイター』が守ってきたこと、変えてきたこと

『ストリートファイター』シリーズの魅力は、「時代を超えても核心を守る」と「時代に合わせて、大胆に変えていく」を両立させたことにあります。

まず「守ってきたこと」は、個性的なキャラクリ力 。『ロックマン』『逆転裁判』などキャラ作りの名門として知られていますが、そのノウハウが本シリーズではギュッと凝縮。なにしろプレイアブルキャラが40人いれば、40人とも「主人公」なんですから。

また「実力差が勝敗に直結する」厳しさも受け継がれてきた核心の1つ。それは対戦格闘がブームを超えてeスポーツ(の先がけ)として定着し、競技性を求められた事情もあるのでしょう。

では、「変えてきたこと」とは何か。1つには、グラフィックの手法です。

『ストⅡ』以来の2Dドット絵は『ストリートファイターⅢ』の膨大なアニメパターンにより極致に達していましたが、続く『ストリートファイターⅣ』では3Dファイターたちによる多彩な格闘スタイルに進化しました。開発・販売元のカプコンといえば『魔界村』シリーズや『ロックマン』シリーズでも3Dに転換していました。

文字通り次元をまたぐ大変革でしたが、ナンバリング(正当続編)初の3Dながらも表現がこなれており、2Dの持ち味を残していた印象がありました。いわば「変革」と「継承」を同時にやってのけたことが、『ストリートファイター』の未来を切り拓いたといえるでしょう。

もう1つは、基本システムのリセット。『ストⅢ』までに複雑になったシステムを『ストⅣ』では刷新し、初心者が入門しやすい間口の広さに。さらに『ストV』では『ストⅣ』の尖った部分をなくし……という風に、閉ざされたコミュニティにしないよう「原点回帰」をめざした“変化”が繰り返されてきたのです。

なぜ『ストリートファイター』はゲーム大会で人気がある?

なぜ『ストリートファイター』はゲーム大会で人気がある?

『ストリートファイター』シリーズが根強く支持され続けているのは、格闘ゲーム大会やイベントの常連であり、新作が出るたびに正式種目になっている事情も大きいでしょう。派生作品となる『ストリートファイターZERO』シリーズも、全国大会が行われたこともあるほど。

なぜ、大会やイベントで引っ張りだこなのか……。まず、対戦格闘を根づかせたのは『ストⅡ』という元祖的なポジションのためでしょう。

現在もゲームセンターにある、2つの筐体が背中合わせになった「対戦台」は開発元のカプコンが想定していたものではなく、どこかの店舗が自発的に始めて、他の店舗にも広まったもの。「与えられた」のではなく「プレイヤーが求めたもの」であり、それほど『スト2』の対戦が魅力的だったわけです。

最初は店ごとに行われたゲーム大会が、やがて大がかりな全国規模へと発展。海外ではわずか40名の参加者から始まったEVO(Evolution Championship series)が世界的なイベントに成長を遂げ、日本でも「闘劇」(〜2012年)などが行われていました。

そして数ある対戦格闘ゲームの中でも、『ストリートファイター』は最も息長くシリーズが続いている1つでもあります。どれほど面白いゲームであれ、新作が出なければ新規プレイヤーも入りづらく、観戦だけも含めたファンの裾野も狭くなってしまう。「ファンの熱い支持があり、それにカプコンが応え続けた」結果が大会での盛り上がりなのです。

初心者にとことん歩み寄った『ストリートファイター6』

初心者にとことん歩み寄った『ストリートファイター6』

『スト6』(略称)は、極論すればシリーズ最新作を出しただけで、ファンは歓喜する状態にありました。が、そこに甘んじずに「その先」を目指したことが、発売早々メガヒットの結果に繋がっているのでしょう。

最初からプレイできる18体ものキャラクター(追加キャラは予告済み)は、懐かしの顔ぶれもあれば、新規参戦キャラもあり。特に新規キャラは、たとえば「スーパーモデルにして柔道」など2つの属性があったりと造形が凝っています。

が、それは「実際に長くプレイしてみて分かる」ことです。『スト6』のスゴさは、これまで対戦格闘ゲームに触ったことがない、究極の初心者にもとことん歩み寄っていることにあります。

レジェンドに享受する自己研鑽モード

その最たる要素が、たった1人で遊べるストーリーモードの「ワールドツアー」でしょう。初心者にとって怖いのは、強い人間プレイヤーに出会って、何もできずに叩きのめされること。その「対戦」要素をなくし、「格闘アクションゲーム」としてシステムに慣れてもらおう、というものです。

プレイヤーは主人公として「アバター」を作成。スリムかマッチョか、若者か高齢者か腕が長いか足が長いか、とことん作り込みが可能です。発売に先んじたベータテストでは、あまりに自由で多彩なキャラクターメイキングが話題を呼んでいたりしました。

このアバターをそのまま操作でき、街行く人に勝負を挑んで野良バトルも可能。道を歩くおばちゃんや、大道芸人に喧嘩を売って路上でファイトできるシュールさ! 

プレイヤーは世界各地を巡り、レジェンドファイター(ゲーム本編でプレイできるキャラ)に弟子入り。そこで格闘スタイル(基本技)や必殺技を習得でき、たとえば「ルーク(主人公の位置づけ)の基本技を身に着け、ブランカ(ジャングル育ちの戦士)のローリングアタックも使う」なんてことも可能。

そうして様々なキャラの必殺技に慣れ親しみ、どのスタイルが自分に合うかということも探れる。それにRPGのような成長要素もあり、攻撃力が上がったり、新たな必殺技をゲットできる楽しさもあります。

アケコン要らず。パッドでも波動拳が出せる

そして基本のゲーム操作も、新システムの「ドライブシステム」を軸として一新されました。シンプルな操作で攻撃や防御を強化でき、なおかつ演出もド派手。初心者には取っつきやすく、ベテランには奥が深く、「間口の広さとやり込みの深さ」を同時に追求したものです。

より大胆な革新と言えるのが、操作タイプに「モダン」を導入したことでしょう。なにしろボタン1つで、シリーズの代名詞でもある波動拳が出せる! 必殺技ボタン+方向キー1つで技を繰り出すことができ、複雑な必殺技コマンドを覚えることも、また入力ミスを恐れることもなく、華麗に立ち回れるのです。

たしかに、従来の操作タイプほど複雑な技は出せないデメリットはある。が、初心者、あるいは長らくストリートファイターから遠ざかってきた人に対して、とことんハードルを下げたには違いありません。また、ゲーム機の標準ゲームパッドでも遊びやすく、満足に戦えることも大きいでしょう。

対戦をせずとも「ワールドツアー」を1人で楽しむことができ、「モダン」操作で手軽に必殺技を使いこなすこともできる。またコマンド入力を覚えたい人には、「プラクティス」モードに様々な訓練メニューが用意されています。

これだけ全方位の遊び方が用意され、どれ1つでも元が取れそうな対戦格闘ゲームは前例がなかったはず。YouTube等で名勝負を見てきて自分も対戦デビューを飾りたい、久しぶりに『ストリートファイター』シリーズに戻りたいという人々には、ベストチョイスとなりそうです。


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  • ライター

    多根清史

    1967年、大阪市生まれ。京都大学法学部卒業。著書に『ガンダムと日本人』『教養としてのゲーム史』、共著に『超ファミコン』などがある。ゲーム・アニメ・マンガ、政治・ITなど幅広いジャンルで活動中。

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