『スト6』に期待、『ストリートファイター』の変遷を初代から振り返ろう

『ストリートファイター』シリーズは世界で最も有名な対戦格闘ゲームの1つです。今年で35周年を迎えた歴史を重ねており、さまざまな世代にまたがりながら、時代に合わせた進化を遂げ、闘いを求めるプレイヤー達を惹きつけてきました。シリーズ最新作『ストリートファイター6』の制作も発表され、現時点では詳細は不明ながらも、最新技術を駆使した「正当進化版」と予告されて期待も膨らんでいます。今でも「俺より強いやつに会いに行く」と、猛者達が激戦を繰り広げている同シリーズは、どのような道のりを辿ってきたのでしょうか。1作ずつ紐解き、深みにはまっていきたいと思います。

ライター:多根清史

初代『ストリートファイター』。昇龍拳を出せれば「勝ち」だった

第1作目である『ストリートファイター』は、1987年から稼働したアーケードゲーム(ゲームセンターに置かれるゲーム)でした。「主人公たちが、強豪と戦うため世界中を旅をする」というシリーズ共通のお約束も、当初からありました。ただし「2人のキャラクターが向かい合って戦う」ことや「お互いの体力ゲージを削りきると勝ちになる」のは、他社のゲームにも前例がありました。

決定的に違ったのは、強力な必殺技の存在。特定のレバー操作+ボタンのコマンド入力により「昇龍拳」や「波動拳」などが飛び出し、2、3発も当てれば勝ちが確定。あまりにも強烈だったためか、コマンドは当初、秘密にされていたほどです。

後の対戦格闘ゲームの基礎を築いたような本作ですが、初期のアップライト(立って遊ぶ)筐体では圧力センサー付きボタンを採用していました。つまり叩く力に応じて技の種類が、弱・中・強の3段階に変化したのですが、ボタンを押すタイミングが取りづらく、必殺技のコマンド入力と相性が悪い……。個人的には昇龍拳や波動拳に何度も挑戦したものの、滅多に出ませんでした。
ですが、後に出たテーブル筐体(座って遊ぶ)版では、圧力センサーがパンチ・キック×弱・中・強に対応した6ボタンに変更。最新シリーズでもおなじみの1レバー+6ボタンは、初代から受け継がれているのです。

アーケードゲームのイメージ

「対戦格闘ゲーム」を確立した『ストリートファイターII』

1991年に稼働を始めた第2作『ストリートファイターII』こそ、世代を超えるシリーズ人気を決定づけたばかりか、対戦格闘ブームを巻き起こした革命的な作品でした。個性豊かな8人のキャラクターを自由に選んでプレイできるのもさることながら、全員が生き生きと動くことが驚きでした。
格闘ゲームとは「人間を操り、パンチやキックを繰り出す」遊びですが、『ストII(略称)』ではそのモーション1つ1つが恐ろしく作り込まれていました。大量のキャラクターパターンを用意し、かつ大きな(当時としては)キャラクター2人を同時に表示しつつ、息づくように動かす。それはドットを打つ人の莫大な労力とセンス、それに進化したハードウェアあればこそできたのです。

全キャラクターがそれぞれに異なる通常技や必殺技を持ち、たとえば春麗は華麗な足技を繰り出し、巨体のザンギエフはスクリューパイルドライバーを放ち、野生児ブランカは電撃やローリングアタックで飛び回る。ダルシムの手足が伸びる攻撃は、「ゲームの常識」さえ破壊した感がありました。
さらにジャンプ攻撃には「上ガード」、足払いなどの下段攻撃には「下ガード」という防御の使い分けも確立。キャラクターの華やかさ、操作して動かす楽しさ、駆け引きの奥深さが三拍子揃ったのでした。
そして見知らぬ人と人が集い、互いに関わることが少なかったゲームセンターで“対戦”の面白さが根づいたのも、『ストII』がきっかけではないでしょうか。もともと本作の対戦は「プレイヤー2人が隣り合わせで座る」スタイルでしたが、遊んでいる人の横に座るのは勇気が必要なことです。が、どこかのお店が筐体を背中合わせに置いて「相手とは直接顔を合わせなくて済む」対戦台を置いたことからハードルがぐっと下がり、あっという間に対戦が大ブームに。ほとんどのゲームセンターは、『ストII』の対戦台で埋め尽くされていた時期もあったほどです。

スーパーファミコン版やバージョンアップ版の成功

その熱気が一時的なものに終わらなかったのは、1つに家庭用ゲーム機への移植があったからだと推測できます。最初に登場したスーパーファミコン版の完成度が素晴らしく(外注ではなく、カプコン自ら開発)、デモや音声など削られた箇所はあったものの、対戦バランスについては原作をほぼ完全再現。国内だけでも290万本近くの大ヒットとなり、ゲームセンターに行けない小中学生でも遊べたことで、後の息長い格闘ゲームの定着に繋がったと思われます。
また本作は『ストリートファイターII’(ダッシュ)』や『ストリートファイターII’ TURBO』といったシリーズが続々と作られました。新たなキャラクターを追加しつつ、それぞれの技の強さを調整……と改良を重ねていったのは、後でアップデートを配信して調整するインターネット時代を先取りしたともいえます。

その最終形態となったのが、94年稼働の『スーパーストリートファイターII X』です。当時は『ストII』の起こしたブームのおかげで、他社からも面白い対戦格闘ゲームが次々と発売され、『ストII』のバージョンアップ版も苦戦を強いられていた感があります。が、本作は「スーパーコンボシステム」、つまり「溜めたゲージを消費して、通常よりも威力が高い必殺技を発動」する仕組みを導入。対戦バランスも練りに練られており、奥深さが再びファンを呼び戻したのです。

『ストリートファイターIII』シリーズは究極の2D格闘ゲーム

1990年代半ばからは、『ストリートファイターZERO』(1995年~)と『ストリートファイターIII』(1997年)シリーズ。それぞれが2本柱として成長を遂げていきました。

まず『ストZERO(略称)』シリーズは、絵柄がアニメ調になり、『ファイナルファイト』からのキャラクターたちも参戦したことも驚きを与えました。
さらに空中ガードや、通常技の弱・中・強をつなげるZEROコンボ(後に廃止)や、スーパーコンボを3段階までストックできたり、ガード中に反撃可能なZEROカウンターなど、新たなシステムも盛りだくさん。1〜2年のペースでバージョンアップ版が投入され、中平正彦さんのマンガ版から「神月かりん」が“逆輸入”されたこともありました。

かたや『ストIII(略称)』は「究極の2D対戦格闘」という異名を取るゲーム。キャラクターらは膨大なアニメパターンにより生き生きと動く一方で、敵の攻撃をさばく「ブロッキング」が導入。登場キャラもリュウとケン以外は総入れ替えとなり、新たな出発への強烈な意気込みが感じられました。
さらに第1作の稼働開始から約2年後、3作目の『3rd STRIKE』では、練りこまれた調整により「駆け引きを奥深くする」という目標が達成され理想と現実とが一致し、最高の対戦ツールと呼ぶ声が相次ぎました(豪鬼や春麗など過去作のキャラクターも復活)。
凝りに凝ったシステムは人を選びましたが、上級者らが熱心な活動を繰り広げたおかげで世界大会でも種目に採用されるようになり、10年以上も遊ばれ続けることに。世界最大級の格闘ゲームイベントEVO2004でプロゲーマーのウメハラこと梅原大吾さんが、春麗のスーパーアーツ(超必殺技)鳳翼扇をすべてブロッキングで捌ききり(1度でもガードして削られると敗北という状況)見事に勝利した「背水の逆転劇」も語りぐさになっています。

オンライン対戦を盛り上げた『ストリートファイターIV』

前作から約10年ぶりに登場した『ストリートファイターIV』(アーケード版は2008年、PS3/Xbox360/Win用は2009年〜)シリーズは、グラフィックが3Dになりましたが、ゲーム性は2Dのまま。玄人好みとなった『III』から『ストII』への原点回帰がうたわれていました。これすなわち「前に遊んでいた人も、今回が初めての人も、みんなで集まって気軽に楽しめる」ことを目指して作られたと思われます。

基本的には『ストII』がベースで、間合いの取り方や必殺技の出し方もほぼ「あの頃」のまま。細かなことを覚えなくとも駆け引きを楽しむことができ、その狙い通り多くのプレイヤー人口が集まっていました。
独自の防御システム「セービングアタック」も導入され、連続技のコンボも目押しの精度が重要に。これらを極めれば極めるほど強くなれる奥深さが魅力となりました。そのため、実は初心者とエキスパートとの実力差が開きやすい一面もありました。シリーズ最終作の『ウルトラストリートファイターIV』(2014年)では「レッドセービングアタック」などの新システムも追加され、熟練者でも飽きが来にくい配慮がされていたわけです。

その一方でキャラクターも次々と追加され、ついには44名という数に……。リアル会場での大会もさかんに開催されたほか、家庭用版はオンライン対戦できることもあり、2010年代の対戦格闘ブームを大いに盛り上げる存在となりました。

対戦のイメージ

『ストII』への原点回帰をめざす『ストリートファイターⅤ』

そうした現在発売されている中での最新作シリーズが、『ストリートファイターV』(2016年〜)。今回もテーマは、初代『ストII』への原点回帰。『IV』でも目指したことでしたが、6年もの進化を重ねる内に尖っていった部分をリセット。前にシリーズを遊んでいたプレイヤーが再び入ってこられるタイトルになるよう意識されたといわれます。

この『ストⅤ(略称)』では特に“取っつきやすさ”が前面に押し出されており、セービングアタックをなくしたことで攻防がシンプルになり、「積極的に攻めていった方が大ダメージを与えて、勝ちやすい」作りとなりました。
その一方で、相手の攻撃を喰らったりすることで溜まる「Vゲージ」を消費する「Vスキル」「Vリバーサル」「Vトリガー」などのシステムを新たに追加。「しっかりと攻め、しっかりと守る」攻防を分かりやすくしながらも、ひたすらゲームをやり込んで理解した方が勝率が上がる奥深さとも両立しているわけです。
そして『ストリートファイターV チャンピオンエディション』という新バージョンが出た後も元々の『ストV』を持っている人には追加のキャラクターやステージ、コスチュームなどをまとめて入手して同じ内容にできる「アップグレードキット」(有料)をダウンロードコンテンツとして配信。ネット時代ならではの「ゲームソフト本体を買い直さなくても済む」うれしさです。

今年で6年目を迎えた『ストV』シリーズですが、追加キャラクターも続々と参戦し、今や総勢45人にも達しています(「シーズン5」時点)。懐かしの歴代人気キャラたちも加わっており、しばらく対戦格闘ゲームから遠ざかっていたプレイヤーでも戻ってきやすいはず。なるべく遅延の少ない高速なネット環境を整えた上で、オンライン対戦にデビューしてみてはいかがでしょう。制作が決定した『ストリートファイター6』も楽しみです。


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※上記掲載の情報は、取材当時のものです。掲載日以降に内容が変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。

  • ライター

    多根清史

    1967年、大阪市生まれ。京都大学法学部卒業。著書に『ガンダムと日本人』『教養としてのゲーム史』、共著に『超ファミコン』などがある。ゲーム・アニメ・マンガ、政治・ITなど幅広いジャンルで活動中。

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