伝わりにくいプレゼン資料をプロのデザイナーに本気で添削してもらった

皆さん、プレゼン得意ですか? 私は苦手です。資料づくりの方法が自分の中で定まっておらず、毎回つくり方が変わるのもイヤです。どうしたら言いたいことが伝わるのか? そもそもメッセージをどう整理すればいいのか……。
思い出したのが、Web制作会社ベイジのデザイナー・荒砂智之さんのこのブログ記事。

・誰も教えてくれない「分かりやすく美しい図の作り方」超具体的な20のテクニック
http://tomoyukiarasuna.com/make-images/

はてなのホッテントリになっていたので読んだところ、ノンデザイナーでも役立つ資料づくりのノウハウがたくさん書かれていました。そこで、分かりやすいプレゼン資料の作り方を聞くべく、ボツ資料(とある会社から提供)を引っさげ、荒砂さんに添削してもらいました。


――荒砂さんのブログ記事、大変役に立ちました。反響は大きかったですか?

荒砂智之さん

ありがとうございます。公開後、おかげさまで色んな方にお声がけいただき嬉しかったです。イベントで登壇の機会をもらったり、『ノンデザイナーズ・デザインブック』20周年記念の特典ebookに寄稿させていただいたりもしました。

――みんな、分かりやすい資料の作り方を知りたいんでしょうね。ちなみにどうしてこういう記事を書こうと思われたんですか?

元々、社内のデザイナー向けにデザインを教える機会が多くあったのですが、場当たり的にその場その場で教える、という方法で効率が悪かったため、ノウハウを体系化してまとめて効率的に教えようと思ったのがきっかけです。しかしどうせなら、もっとターゲットを広くして日々提案書を作られるような方でもすぐ活かせる内容にできないかと考えて、ビフォーアフター形式の分かりやすい事例としてまとめてブログで公開してみたんです。

――そうだったんですね。より伝わりやすい資料にしていただこうと、ある会社でボツになった資料を事前に荒砂さんに見ていただきました。感想はいかがですか?

(ボツ資料です)

ボツ資料
ボツ資料
ボツ資料
ボツ資料
ボツ資料
ボツ資料
ボツ資料
ボツ資料

荒砂さん添削後のすべてのページはこちら

うーん……失礼ながら、伝えたいことが素直に伝わりにくいですね。あと論拠が薄くて説得力がイマイチかと思います。

――確かに。作った方には申し訳ないですが、私もパッと読んで内容が入ってきませんでした。

はい。全体の感想としては3つあって、
1.主題(伝えたいこと)が見えにくい
2.結論に対する理由が論理的につながっていない
3.根拠が薄く説得力が無い
ということです。

主題(伝えたいこと)が見えにくい

――1番目の「主題が見えにくい」のはどの辺でしょう?

主題(伝えたいこと)が見えにくい

例えば1~3ページ目は文章が多く、主題を理解するまでにとても時間がかかります。プレゼン資料は大きな見出しなどで興味を引きつけてから小さな文字を読み進めてもらう方がいい。あと、結論を述べるのに不要な話はすべて無くしたいですね。文字量は今の3分の2には減らしたほうが良いです。

――「何の資料なのか」が確かに分かりにくいかもしれませんね。

そうですね。1ページ目でもいろいろと書かれていますが、言いたいのは「地方に投資と消費を集め、絶えず回す仕組みを作ること」ですよね。主軸のところを説明しているようで、よく分からない。

(添削前:1ページ目)

(添削前:1ページ目)

――始まった途端に文章が長くて読む気をなくしてしまう……。自分もそういう資料になっちゃうことが多いです。

はい。簡単に修正のスライドを作ってみたんですけど……。

――おおっ! ありがとうございます。

文章量を減らし、結論がシンプルに分かるようにまとめてみました。このくらいシンプルじゃないとこのページで言いたいことは伝わらないと思います。

(添削後:1ページ目)

(添削後:1ページ目)

――ありがとうございます。修正いただく際、どういう風に考えられたんでしょう?

見る人の目線は左上→右下に進むので、最初に企画の背景を書き、結論は下にあったほうが理解しやすいです。元の資料の結論も赤文字、下線で強調されてましたが、まだコントラストが弱い。文字のサイズや装飾をこのぐらい明らかに変えて、違いを出したほうが分かりやすいです。

――図の配置は悪くないんでしょうか?

はい、左右対称のレイアウトは安定感があるのでこれは良いです。あと中央揃えも。
デザインの仕事だと素人感が出てしまうので避けることが多いですが、提案書のように内容を分かりやすく伝えることが主目的の場合は安定感があった方が良いと思います。

――図の上に見出しも太字で追加されましたね。元の資料ではキャプション的に小さく入っていました。

ほとんどの人は新聞でもWebサイトでもプレゼン資料でも、流し読みをしています。小さい文字は読んでもらえないと思ったほうが良いです。長文を避け、一言で伝わる短い見出しを加えるとすばやく伝わります。

――文字が多いと「こんなに調べたんだな」と熱意は伝わるけど……。 

資料を投影しながら自分で話をするようなプレゼン資料の場合は言葉を少なくすべきですね。ただもちろん、回覧される稟議の資料や、社内検討のため持ち帰るなど、書き込みが多いほうが良い場合もあります。私の会社では、場合によってプレゼン用とお客さまの稟議用の資料、2種類つくることもあります。

――それはすごく丁寧ですね! プレゼンテーションとドキュメンテーションの違いですね。

結論に対する理由が論理的に繋がっていない

――「結論に対する理由が論理的に繋がっていない」これについてはどうでしょう。

例えば2ページ目、これも文字量が多い問題が前提としてありつつも、大きく伝えたい主題以外の、別の話も入ってしまっています。

(添削前:2ページ目)

(添削前:2ページ目)

1.イタリアの地方創生プロジェクトは1500億円規模、さらにプロジェクト数も1500超。
2.世界的に見ると地方創生は実現されているが、日本は大きく遅れをとっている。

文章中、イタリアに加えドイツの事例が挙がっていますが、イタリアはビジネス規模の話なのに、ドイツはGDPや輸出量の話になっていて、1つの結論を導き出すための根拠としてその2つが繋がらない。また最後は結局ドイツの話になってしまっていますし、話があべこべに感じてしまいます。

――あれ、イタリアの話は?となりますね。

そうですね。
書類にまとめる前に、
・一番伝えたいことは何か
・そのためにどんな話を出すべきか

の設計図を事前に用意したほうがいいです。資料をつくりながら、常にそれと照らし合わせていく。

これも修正した資料をつくってみました。

(添削後:2ページ目)

(添削後:2ページ目)

――おおっ! 差が分かりやすいですね。

この資料全体で言いたいことは「イタリアと地方創生の規模では差があるけど、ブランドは日本にもたくさんある。もっと日本の良い地方ブランドを知ってもらうメディアがつくりたい」ということだと考えました。その結論に持っていくために、この2ページ目ではイタリアを例に、海外との差をより分かりやすく見せるべきだと思いました。

――元の資料では、テキストがイタリア中心なのに図がドイツ・日本のGDPの比較になって、ズレがありますね。図→テキストの順番にされた意図はなんでしょう?

伝えたい内容によって変わりますが、このスライドはまずパッとビジュアルで差を見せたほうがいい、と判断したからですね。

――自分が何を伝えたいかを整理していないとその境地には至れなさそうですね。

人って話しているうちに自分が何を話したいか分からなくなることもありますよね(笑)。僕は人前で説明するとき、話す順番やどこが大事かをあらかじめ言葉にしておくようにしています。それは資料づくりでも必要なことだと思います。

根拠が薄く説得力がない

――「根拠が薄く説得力がない」これはどうでしょう。

(添削前:3ページ目)

(添削前:3ページ目)

3ページ目を例にすると、ドライヤーや時計はなんとなくメディアで紹介したいブランドがイメージできますが、事業開始の判断をする人がこの内容だけで納得できるかな?と。「なるほど、これなら継続して紹介していけそうだ」と思わせる、具体的な地方のブランドをできるだけたくさん紹介するか、もしくは継続して紹介していける理由みたいなものがないと、納得してもらえないと思いました。1ページに小さな写真を羅列するのではなく、例えば1スライド1ブランドで、特長が何でどれくらい海外でウケるブランドなのか、その理由は何なのか、などを詳細に書いたものを最低でも5~10枚と挙げるべき。その方がメディアをイメージしやすいと思います。サイト運営を始めると、どんどん商品を紹介していきますよね。つまずくのは「何を紹介するか?」という部分かと。決裁者がそこも想像できた方がいい。

(添削後:3ページ目)

(添削後:3ページ目)

――私が企画したわけじゃないけどここまで真剣に考えていただくと嬉しいですね……。例証して別のケースも考えられるといい、ということですね。ここまでは背景の説明、4ページ目から実際のメディアの話になっていきます。

どんな付加価値をつけるのかが一行で書かれていますが、具体的な方法を書いたほうがいいですね。実際のメディアの画面イメージや使うサービスなども書いてますが、それはもっと後でもいいので、社内や外部の運営体制など、企画の実現可能性がどこまで具体的に書かれているかがポイントだと思いました。

(荒砂さん添削後:すべてのページ)

(荒砂さん添削後:すべてのページ)
(荒砂さん添削後:すべてのページ)
(荒砂さん添削後:すべてのページ)
(荒砂さん添削後:すべてのページ)
(荒砂さん添削後:すべてのページ)
(荒砂さん添削後:すべてのページ)
(荒砂さん添削後:すべてのページ)

添削前のボツ資料と比べてみてください

資料の構成と設計図のつくり方

――資料の流れ、構成としてはどうでしょうか?

最初に前提条件・背景を説明、自社のやる理由の提示、具体的な企画内容、と話の順番は良いと思います。
背景の説明が3ページありますが、実際どう付加価値をつけるかは薄いですね。
資料を見て「この企画ならできる」と相手に思わせる、説得力があるかが重要だと思います。

――荒砂さんは資料作成に入る前に設計図をつくるそうですが、どういうものなんでしょうか?

設計図はテキストの箇条書きです。言いたいことをバーッとまず書くんですが、そのとき自分なりに見出しのつけ方を決めています。

▼大見出し
▽小見出し
・項目

それぞれインデントもします。

なぜこのルールにしたかは覚えてないんですけど、会社で毎日1000字ぐらいの日報を書くうち、自然と分かりやすく整理するようになりました。

――ありがとうございます! 箇条書きにした後はどういうフローで資料をつくるんですか?

こういう順番でやっていきます。

1. メモに言いたいことを思いつくだけ書き出す
2. 書き出したものを近しい情報ごとにグルーピングする
3. グループで分けた時に数が少ないものはさらに考えてアイデアを補強していく
4. どの順番で話を伝えるのかを検討する
5. 付箋をスライドに見立てて、絵と言いたいことをサムネイルとしてまとめる
6. 並べてみて違和感がある部分は入れ替えてページネーションをブラッシュアップする
7. PowerPointなどで清書する

――参考になります! 元ナタリー編集長・唐木さんの『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』という本にも「いきなり書かず、主眼と骨子を決めてから書こう」とあったのを思い出しました。ライティングとプレゼン資料の設計は近いですね。ただ設計図はいいけどビジュアライゼーションは不得手な場合、どうすればいいでしょう?

『ノンデザイナーズ・デザインブック』にもある、デザインの4つの原則に従って情報を整理すると良いと思います。タイトルにある通り、デザイナーでない方向けに書かれている書籍ですので、徹底的に読み込んで実践すればするほど、ビジュアルとしてまとめる力も強くなると思います。

  1. 近接
  2. 整列
  3. コントラスト
  4. 反復

  5. です。

ウェブデザインに応用する4つの基本原則 from Tomoyuki Arasuna

――ありがとうございます! 資料作りにもデザインのフローや発想が役立つんですね。
最後に、この記事を読んでくれた人がすぐマネできて、かつ資料の分かりやすさが改善する特におすすめのコツを1つ教えてください。

とにかく文字量を減らすことだと思います。一度一生懸命書き上げた後、次の日に見返してその文字量を半分にできないか、を考えてみると良いと思います。省く部分は、主題と関係のない話や、冗長な言い回し、無くても伝わる話、などです。

あと伝え方はもちろん大事ですが、企画内容がダメだとボツになってしまうと思うので間違えないようにしないといけません(笑)。

――あくまで伝え方は良い企画をより分かりやすくさせるためのものですもんね! ありがとうございました。

荒砂智之(あらすなともゆき)

プロフィール

荒砂智之(あらすなともゆき)
数社のグラフィックデザイン会社、Web制作会社に勤務したのち、2011年に株式会社ベイジに入社。Webサイト制作におけるUXリサーチ、情報設計、アートディレクション、デザインを手掛ける。

自身のブログでデザインに関する情報をまとめて発信しており、なかでも『誰も教えてくれない「分かりやすく美しい図の作り方」超具体的な20のテクニック』がブックマーク数5,900を超え、2017年「はてなブックマーク」年間ランキング1位を獲得するなど大きな話題を呼ぶ。

ロゴデザインについても多数の実績があり、日本タイポグラフィ年鑑への入選歴もある。近年はWeb制作やデザインに関わるセミナー・イベントへの登壇も意欲的に行うなど、活動の範囲を広げている。

ブログ
http://tomoyukiarasuna.com/
https://note.mu/arasunatomoyuki

Twitter
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Facebook
https://www.facebook.com/arasunatomoyuki

所属会社
株式会社ベイジ
https://baigie.me/

[2018年12月10日 Zing!掲載]


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※上記掲載の情報は、取材当時のものです。掲載日以降に内容が変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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