おうち時間が増え、業績が伸びるお絵かき講座「パルミー」。オンラインで学ぶメリットは?

新型コロナウイルスの影響で、家で過ごす「おうち時間」を楽しもうとする人が増えてきています。新しい趣味を始めた方、始めようと考える方も多いのではないでしょうか。
いま業績が伸びているのが、さまざまな趣味やスキルを学べるオンライン学習サービス。コロナ禍でのユーザーの増え方や、オンラインで学ぶメリットは何なのか。
今回はオンラインお絵かき講座「パルミー」を展開する、株式会社パルミー・CTO(最高技術責任者)澤田賢吾(さわだけんご)さんにお話を聞きました。

ライター:平田提

コロナ禍でユーザーが倍増した、お絵かき講座パルミー 

――澤田さんは株式会社パルミー・CTO(最高技術責任者)ということですが、CTOの仕事はどんなものなのでしょうか?

お絵かき講座パルミー

澤田さん:オンラインお絵かき講座「パルミー」のシステムの設計、管理、技術方針の決定をしています。また、デザイナー・エンジニアと協力してパルミーのUI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザー体験)を作っています。

――新型コロナウイルスの流行以降、現在のパルミーのユーザー数や業績に影響はありましたか?

澤田さん:4、5月の緊急事態宣言発令中に受講者の数が急増し、新型コロナウイルスの流行以前と比べて受講者数は約2倍になりました。

――倍増はすごいですね……! 増えた要因は何でしょうか。

澤田さん:新型コロナウイルスの影響でおうち時間が増えているのは大きいと思います。
家から出られないので、これを機に今までできなかった絵を描くことを学びたい、という方が増えています。初めて本格的に絵を描こうとされる方も多いです。

――一部の有料サブスクリプションサービスだと、コロナ禍に入ったユーザーは退会しにくいというデータもありますが、パルミーの場合はいかがでしょうか?

https://digiday.jp/publishers/so-far-publishers-are-keeping-subscribers-gained-during-the-coronavirus-crisis/ ※有料記事)

澤田さん:パルミーの月謝制は6カ月のプランと1カ月のプランがあります。
6カ月プランに入られる方が多く、緊急事態宣言発令中に入られた方の契約更新がまずは11月頃なので、解約数が増えるかはまだ分かりません。
ただ、1カ月プランで入られた方の継続率を見てもネガティブな影響は出ていないですね。

パルミー創業者と二人三脚でサービスをつくりながら学ぶ

――もともと澤田さんは、創業者の伊藤さんと、株式会社ディー・エヌ・エーで一緒に働かれていたんですよね。

株式会社パルミー・CTO(最高技術責任者)澤田賢吾(さわだけんご)さん

▲株式会社パルミー・CTO(最高技術責任者)の澤田賢吾さん。

澤田さん:はい、当時は新規事業の部署にいて、伊藤がプロダクトオーナーで、私がエンジニアとしてiOSアプリを一緒につくっていました。
ある日伊藤からLINEが来て「週末に一緒にサービス開発しない?」と誘われました。

――伊藤さんのお誘いにどう反応されたんですか?

澤田さん:もともと起業に興味があり、教育サービスに関わりたかったので、二つ返事で引き受けました。

――どのようにパルミーの開発を進められたんでしょうか。

澤田さん:最初の企画は絵に関わらずいろんなハウツーをプラットフォームで学べる教育サービスでしたが、その後漫画・イラストに絞ることになりました。
伊藤はもともと漫画家を目指していましたし、私も日本の漫画・イラストの文化で世界とつながりたい思いがあったので、より作りたいサービスになりましたね。最初は平日に前職の仕事をしながら、土日を使ってパルミーを開発していました。

――本業もあって土日も働かれていたんですね。

澤田さん:新しいものを作るのが好きなので、意外と苦にはなりませんでした。
あと一人ではなく、伊藤ともう一人エンジニアがいたことも大きいです。三人で開発していたからこそ、楽しく続けられました。

――どのくらいの期間、開発を続けられたんでしょうか。

澤田さん:3カ月くらいかけて開発して、初期のiOSアプリ版を2014年にリリースしました。システムの開発と並行して講座の動画も撮影していました。初期は先生が絵を描いている画面をキャプチャしながら、描き方を解説してもらう形式の10分くらいの講座を作っていました。
イラスト初心者の方が陥りがちなミスを考慮し、あえてダメな例を先生に描いてもらうなど、試行錯誤で講座制作のノウハウもつけていきました。

――パルミーを開発するにあたって参考にされたサービスはありますか?

澤田さん:動画系や教育系のサービスはよく参考にさせてもらっています。
動画で学習するサービスだと「Udemy」「ドットインストール」や、英語学習の「Duolingo」「スタディサプリ」などですね。サービスを体験して「ここがいいなあ」と思ったポイントはパルミーにも取り込みました。

おうち時間、スキマ時間を活用して絵が学べる

――起業初期から、一番大変だった時期っていつですか?

澤田さん:サブスクリプションを始める前ですね。今のパルミーは月謝制ですが、その前は60から90分程度の授業4限分を1講座15000円で販売するビジネスモデルでした。
どの講座がヒットするか分からず、苦しい時期でした。世界的に見ても動画サービスの勝ち筋がサブスクリプションになってきていた時期に、月額課金モデルに移行しました。それからは事業が安定して成長するようになっています。

月謝制講座の一部

▲お絵描き講座パルミーの月謝制講座の一部。初心者向けから中級者以上に向けた細かいテーマでお絵かきのレッスンが受けられる。

――ユーザーの方にはパルミーのどのような点が評価されていると思われますか?

澤田さん:プロのイラストレーター・漫画家による数多くの講座が受けられるのはもちろんのこと、評価されている1つは受講料だと思っています。イラストの専門学校に通うことに比べると、パルミーでは講座を格安で受けられます。2つ目は好きな時間に授業を受けられること。パルミーユーザーは夜に利用される社会人の方が多いのですが、本業があって忙しい方でも学びやすいように、動画一本あたりの時間を短くするように心がけています。

――それはオンラインで絵を学ぶメリットですね。学び続ける仕組みとして、何か工夫されていることはありますか?

澤田さん:動画を見ただけで終わってしまうとスキルが身につきにくいため、学んだことが定着しているかを確認する「練習ログ」というイラスト投稿機能を提供しています。
また、自らの受講履歴や投稿作品をみて成長を振り返る「学習ログ」機能を先日リリースしました。Twitterでもパルミーで学んで描かれたイラストを投稿されている方も多く、どんどん上手くなってる姿を見たり、講座の感想をいただけたりするととても嬉しいです。

海外展開も視野に。インターネットの面白さは世界中とすぐ繋がれること

――お絵描き講座パルミーは今後どんな展開をされていくんでしょうか。

澤田さん:良質なコンテンツを増やすのはもちろんのこと、ユーザーの方が学びやすいサービス設計の改善を続けたいです。「月謝制を始めたけど何をすればいい?」「次にどの授業を受ければいい?」と悩まずに学習が続くようにしたいと考えています。
例えば、ユーザーがその時その時学ぶべき・学びたい講座を目につきやすいところに表示するなど、作りたいものはたくさんありますね。個人的な思いもありますが、長期的には海外展開を狙いたいです。

――そうなんですね! 海外展開ではどんな国を想定されていますか?

澤田さん:主にアジアの中国・台湾・韓国などの国ですね。イラストコミュニケーションサービスのpixivなどを見ていても、これらの国の方の投稿が増えていますし、日本の漫画・イラスト文化との親和性があると考えています。
海外の方に受講してもらうには、動画の翻訳や字幕の設定、課金周りのシステム面の改修などやらなければいけないことは沢山ありますね。
もともとインターネットの面白さって、短時間でものが作ることができて、世界中の人と繋がれるところだと思っています。私がIT業界に入ったのも、一生のうちに1つは海外の人に使ってもらえるサービスをつくりたい、という思いがあったからでした。パルミーが日本の漫画・イラストのカルチャーで世界と繋がるサービスになれたら嬉しいですね。


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  • 編集者・ライター

    平田提

    株式会社TOGL代表取締役。秋田県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。メディアの編集や、経営者・映画監督・音楽家・漫画家らへのインタビュー、アニメ・エンジニア関連のコラム執筆等を行う。

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