テレワーク現場の声。在宅勤務の問題点やメリットなどの本音を聞く。

新型コロナウイルスの感染防止対策として「テレワーク」という言葉をよく耳にするようになりました。リモートワークと意味はほぼ同じであり、一言でいえば「在宅勤務」のことですが、実はテレワークは3つのタイプに分かれています。

ライター:CLIP編集部

■在宅勤務
終日、所属するオフィスに出勤しないで自宅を就業場所とする勤務形態です。1日の業務をすべて自宅の執務環境の中で行い、通勤負担が軽減され、時間を有効に活用することができます。育児や介護、また通勤困難者等が当てはまります。

■モバイルワーク
移動中(交通機関の車内など)や顧客先、カフェなどを就業場所とする働き方です。頻繁に外出する業務の場合、様々な場所で効率的に業務を行うことにより、生産性向上の効果があります。営業職など、所属オフィス外での業務が多い職種が当てはまります。

■サテライトオフィス勤務
駅前賃貸ビルや共同ワーキングスペース等、会社以外の場所に設置したオフィスで仕事をする働き方です。会社同等のオフィス機能が完備されているケースが多く、通勤時間が長い社員の勤務に適しています。

国土交通省のテレワークの定義では「職場以外でICTを使って仕事をする人(かつ狭義では1週間に8時間以上の勤務)」となっています。2つめのモバイルワークの項目を見ると、外出先でのちょっとした作業をしている方もテレワークに当てはまるようで、ほとんどの方が知らずのうちにテレワークを行ったことがあるかもしれません。また、数年前にトレンドとなったノマドワーカーも、モバイルワークやサテライトオフィス型に当てはまると言えます。

大手企業やベンチャー企業では必要な機材や環境の整備ができており、もとからテレワークを実施していたところも多いようですが、このコロナ禍の影響で中小企業にもテレワーク実施の追い風が吹いています。

そこで今回は、テレワークを経験している現場の生の声を聴いてみようと、3名の方にインタビューをしてみました。ちなみに今回はコロナウイルスの感染拡大予防に鑑み、インタビューはすべてネットで行っております。

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A子さん(出産を機会に。テレワーク歴7年)
B男さん(今回のコロナウイルスを機に初のテレワーク)
C太さん(東京転勤の後、不便さから自宅をオフィス化)

出産を機に在宅勤務を選んだA子さん

――ご職業を教えてください

大阪の広告代理店で営業職のサポートを主にしております。アンケートの集計やリスト作成、WEB広告の内容確認など、office系アプリやスキャナプリンター、ネット環境があれば作業ができるように配慮した業務をさせていただいています。

――テレワークの前はアルバイトとして会社で働かれていたとか

元々は営業として働いていたのですが、結婚を機に一度退職したんです。でも家事をしていくうちに、これだけの生活は自分の性格に合わないと思いはじめたんです。でもどうすればわからなくて……。思い切って、上司に相談してみてみたら、アルバイトとして復帰できるようになったんです!

――理解がある上司ですね!

はい! でもすぐに、主人の転勤で大阪を離れることになっちゃって……。どうしようかと思ったときに「フリーでやる?」と上司に言ってもらえたんです。それからは、今やっているような業務をさせてもらうようになりました。雇用形態はフリーランスですが、今思えばこれがテレワークのきっかけですかね。

1年後に大阪へ帰ってきて、本来ならアルバイトとして出勤すると思うんですが、この1年で子供を出産していて、家を離れるわけにはいかなかったんです。

――だからテレワークなんですね

会社でも初めてのことだったと思うんですが、上司が在宅勤務を提案してくれたんです。いや~、ありがたかったですね。

――結構、柔軟な会社なんですね

そうですね。私のようなケースって、企業からすると煙たがられると思うんです。仕事と子育ての両立ができなかったり、時間があるのに子供がいるから働けなかったりして、泣き寝入りしているママさんもいると思うんです。でもうちの社長や上司は、女性が働くことや育児に理解があるので、働くママを応援してくれるんです。本当に感謝しかないですね。

――それでは、一日のスケジュールを教えてください

テレワーク1日のスケジュール

――やはり、子供中心の生活ですね。

そうですね。子供が起きているときは思いっきり一緒に遊んだり、散歩したり、他にもママ友とランチに行ったり……、大忙しです(笑)。そして夜、子供が寝てからはしっかり働く。隙間の時間を上手に活用しないと、どんどんやることに追われていきます(笑)。

――これだけ大忙しなスケジュールはなかなか見たことがありません(笑)。在宅勤務で気を付けていることはありますか?

在宅勤務では、業務の進捗具合も、それを遂行するスケジュールもすべては自分次第です。24時間という限られた時間の中で、オン、オフのメリハリをつけて働けるんです。朝早く起きてやるのも夜ふかしするのも限られた時間をパズルのように組みあわせて上手に活用していくことが大事です。
日常のスケジュールをうまく組めば、しっかり働いて給料ももらいつつ、家事や子育て以外にも趣味や娯楽とかに時間を使えることが私にとってのメリットだと思います。

――子育てしながら、夜に働くのはつらくないですか?

私は家事だけじゃなくて、仕事もしていきたい性格なんですよ。少し前までは、毎日のスケジュールが主人と子供主体だったのが、自分の予定が入ってくることで「私も働いている!」っていい刺激になって、家事もしっかりやるようになりました。
今後は仕事を頑張りながら、子供が成長したら、ママの働いている姿をリアルタイムに見せ、子供の前でも誇らしいママになれるように頑張りたいですね!

会社の推奨で在宅勤務を経験した人事系部署のB男さん

――普段はどんな業務をされているんですか

広告関連の企業で人事労務をメインとしています。勤怠管理・給与計算をはじめ、各種会議資料や従業員の問い合わせ対応を行っています。

――コロナウイルスが発端で経験することになったとお聞きしましたが、いつ頃からテレワークの話題がでていたんですか

1月下旬くらいから海外出張に関する警戒の流れはありましたが、テレワークについては2月中旬くらいですかね。日本各地でイベントが中止になり、社内でも大規模な会議が中止や延期、WEB会議を推奨する流れになっていました。そして国内での拡大が目に見えたタイミングで突如、といった感じですね。

――会社からテレワークの推奨はどれくらいの熱量だったんでしょうか

当初は「できる人はやってもいいよ」くらいだったと思います。出張時等に持ち出せるPCを一部の方には貸与しているので、「家でもできる場合は在宅で仕事をしてもよいです」という感じでしたね。

――もとから持ち出しPCがある環境は良いですね。ストレージやチャットツールなどは利用されていますか?

いわゆる社内の共有フォルダ・ファイルサーバや基幹システムには会社の中のネットワークでしか使えませんが、メールやONEDRIVE(※Microsoftの外部ストレージ)は持ち出しPCで操作可能でした。メールも使ってますが、Teams(※Microsoftのグループチャットツール)の活用を始めたばかりでしたね。

――意識してテレワークを用意していたというより、環境がたまたまそうだったという感じですね

そうですね。社外でも仕事ができる環境はある程度整っていました。ガイドラインが追いついていない環境だったので、今回の件で試験的に解禁したような状況だと思います。

――実際にテレワークをやってみてどうでしたか?

思った以上にはかどりましたね。「これをやるぞ!」と決めて取り組めました。姿が見えないからこそ、何をしているのかを共有する意識を持ちましたし。

――スゴイ大事なことを聞いた気がします

Teamsのweb通話で出社してるメンバーとコミュニケーションを取ったり、メールやチャットの対応もスムーズにできました。やっぱり、自分が何をしているのかを言わないとわかってもらえないというのがより顕在的になった気がしますよ。あるいは、これを伝えることで、他のメンバーにも安心してもらえるっていうのもありますよね。

――確かに第三者から見ると、テレワークで不在なのか休暇で不在なのか、わかりにくいですね。

予定表ツールが浸透している会社ならば、ちゃんと自分はテレワーク中ですと予定表に登録しておくことも必要不可欠だと思います。自分のステータスが相手にわかるというのは大事。相手のステータスを知るためのアクセスが容易なのも大事ですね。

――家で仕事することで、何かメリット的なものはありましたか

通勤の心身的負担が減ったのはまぁ大きかったですね。心のゆとりができます。でも自分を律するの難しいです。ちゃんと部屋を替えてやりましたけど、誘惑は多いので……。

――仕事のクオリティとしてはどうでしたか

いつも電話やちょっとした声かけで細切れになっちゃって進まないなと思ってた資料を集中して作成できたり。ただデスクの電話が固定なので、テレワーク中は他のメンバーに取らせてしまうのが申し訳なかったかな……。

――会社に出社してみて、周りの反応はいかがでしたか

これといった反応はなかったですね(笑)。これは部署のコミュニケーション不足だなと。

――お話を聞くとテレワークへスムーズに移行できたように思いましたが、何か壁みたいなものはありましたか?

企業の風土としては、あくまで「仕事とは出社してするものだ」という感じなんです。それに、「持ち出して仕事をする」のと「持ち帰って仕事をする」が結びついちゃっている人も多いので、「持ち帰って仕事をして残業が増えるから駄目だ!」みたいな意識が上の方にはあるのかなぁと推測してます。

――機密情報の漏えいやセキュリティ問題、残業問題などの経験を経ていると、「家に仕事を持ち帰ってはならない」という意識は強く刷り込まれていますね

あとテレワークや在宅になると急に(上司の)不安が増えちゃうんですよね。出社しないと部下の管理ができない、というのもよくわかりません。出社してたら管理できている、という自信もわからないのですが…。出社しててもサボる人はサボりますからね。

――成果とか結果が共有化されてないから、目の前で作業しているところを見ておきたい、みたいな感覚になるのかも

普段から仕事が可視化されたり、進捗の共有とかを可視化している習慣のある組織だと、テレワークがスムーズかもしれませんね。

あとテレワークは「楽してると思われがち」と思われてたりもするのが問題かなと。これは利用者側が引け目を感じてしまったりするんですよね。育児等の事情で在宅されているの方こそ感じてそうです。「あいつテレワークでいいよな」みたいに思われたりする感じ。

――そういったことも含めて、今後のテレワークはどんなことが必要になってくると思われますか?

テレワークする側もされる側も、意識してコミュニケーションを取らないと意思疎通がしにくくなるなとは思います。しかしこれはそもそも、日々の仕事でも同じなので、そこに焦点があたってくるのかなと。「意思疎通が難しいからダメだよね」じゃなくて「こうしたらある程度はできるな!」って方向に進めばいいなぁと思います。テレワークができない仕事や職種もあると思いますが、その一方で、テレワークできるケースもあるということを浸透させたいです。

あと、実践してみた会社こそ、社内外に情報発信をしていってほしいですね。あと今回試験的に解禁することで、実現に向けて動き出す企業の動きは、就活生、転職希望者の良い指標になると思います。

東京転勤の後、不便さから自宅をオフィス化したC太さん

――業務内容を教えてください。

プログラマーをしておりまして、ウェブ系のシステム開発やアプリ開発が業務内容になりますね。

――テレワークを始めたきっかけは何ですか

大阪で働いていたのですが、東京に転勤することになったんです。でも実際に行ってみると、設備も整っていないしオフィスが狭くて、このままでは仕事ができないと思い、自宅をオフィス代わりにしようと、自分で機材を購入したりして環境を整えました。

――会社はそれに賛同したんですね

最初は渋られましたが、僕の熱意をくみ取ってくれたのか、最終的には許してもらえました。本当は嫌だったんじゃないかと思います。

でも、今でも使っているSlack(コミュニケーションツール)やGitLad(ソースコード管理ツール)は大阪で勤務しているときから使っていて、コミュニケーションや成果物の受け渡しで困ることはなかったので、テレワークを始めてからの会社の反応は良くなっているとは思います。

――いつでもテレワークができる環境があったということなんですね。

そうですね。時間や場所に縛られずに通常業務ができるので、私たちのIT業界はもっと取り入れてもいいんじゃないかなとは思います。

――なるほど、技術職ならではの意見ですね。それでは不便だなと思う部分はありますか

社内での評価が目に見える成果重視になってしまうことですね。だいたいの会社がそうだと思うんですが、個人を評価する場合に仕事の成果に加えて、勤務態度も対象になると思います。でもテレワークで働いていると勤務態度を見られることはなく、進捗の報告のみになってしまうんです。
しっかりスケジュールを立てて、業務に取り組んでいるのに「ながら業務しているんじゃないか」と疑問を抱かれているんじゃないかなと思いますね。

――それはちょっと思ってしまいますね。実際のところ誘惑に負けることはないんですか

いつまでに何をしなければならない、とタスク管理をしていればそうはならないと思います。自宅とはいえ「仕事をしている」という意識はずっとあるので、誘惑に負けるのはあり得ないと考えています。

――出社していなくても、時間がくれば仕事モードに入るんですね

もちろん、「私の場合は」という前提があるので、すべての人がそうとは限りません。そこは個人によって、あるいは業種によって、取り入れるのか入れないのかを判断することが大切だと思います。
もし取り入れる場合は、どのように評価するのかもきちんと考えなければならないかと思います。

テレワークも万能ではない

3名をインタビューしてみて感じたのはテレワークに対する評価や思い込みでしょうか。「テレワークは楽をしている」「仕事は出社してするもの」「仕事と子育ての両立(はしにくい)」「出社してないと勤務態度などの評価ができない」という今までの働き方の固定概念こそが、企業が導入に踏み込めない原因だと感じました。

B男さんやC太さんが語っているように、社内よりも集中できる環境であること、通勤のコスト・ストレスがなくなること、時間や場所に縛られないことは、テレワークの十分なメリットといえます。

またA子さんのように経験もスキルもある人材が、結婚を機に退職してしまうのは、人材が不足しがちな中小企業にとっては痛手。それをテレワークという雇用方法でスキルを活用してもらえるのは、企業にとっても、働きたい人にとってもWin-Winなんじゃないかと思います。

ただやはりデメリットは存在するし、テレワークだけでは仕事が回らないことも事実。何でもかんでもテレワークにするのではなく、この機会に従来の働き方の見直しや価値観の再構築をすることが重要なのだと思います。

[2020年3月6日 Zing!掲載]


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