オープンワールドゲームとは何か。『GTAⅢ』が元祖?早すぎた『シェンムー』

ここ数年、「オープンワールドゲーム」という言葉をたびたび目にするようになりました。全世界累計2000万本を突破した(2023年2月時点)『エルデンリング(ELDEN RING)』しかり、ポケモンシリーズの最新作『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』しかり、大作ゲームにはこのジャンル名が冠されることが珍しくありません。

今回はそんな「オープンワールドゲーム」について、紹介していきます。

ライター:多根清史

「オープンワールドゲーム」とは何か

「オープンワールドゲーム」とは、基本的にはどこにでも行きたいところに、画面の切り替えなしに行けるゲームのことです。まずは「移動に制限がない」ことを意味しています。

そこから、ストーリー的にも一本道ではなく、好きな順番にお話を進められる「場合も」あります。ここで「場合」と但し書きを付けたのは、ゲームの進行状況に応じて移動できるエリアが広がる、あるいは敵の強さにより事実上は移動できる場所が限られることが多いためです。

最初は弱く、しだいにキャラクターの能力値を上げたり装備を調えることで強くなるRPG要素があるタイプなら、スタート直後の状態で強い敵がいるエリアに行っても、ただやられるだけで何もできません。たとえ目に見える関門がなくとも、透明な壁が立ちはだかっているのと同じです(かつての『ドラゴンクエスト』シリーズでは橋=「ここから先は敵が強くなる」赤信号でしたが)。

また次のエリアを開放するためには「ストーリー上の中ボスを倒す」を条件としているゲームもあり。その地域内で数あるサブクエストの一部を選ぶ自由はあるが、メインストーリーの進行はガッチリ固められている……というものも、オープンワールドゲームに含まれています。

『GTAⅢ』がオープンワールドゲーム普及のきっかけ

『GTAⅢ』がオープンワールドゲーム普及のきっかけ

そんなオープンワールドゲームは、いつ生まれたのか?
それは定かではありませんが、「オープンワールドゲームを定着させた」タイトルは、2001年発売の『グランド・セフト・オートIII』(以下『GTAⅢ』)でしょう。車泥棒(グランドセフト)ゲームのシリーズ第3作であり、初めて3D化したタイトルです。後にさまざまなプラットフォームに移植され、売上本数は合計で1,000万本を軽く超えています。

主人公はタイトル通り道行く車を奪い、犯罪行為に手を染める無法者です。主なミッションの内容も車泥棒や強盗、爆弾を仕掛けるなど物騒なものが多く、そのため暴力的でアナーキーなことだけが魅力だと思われていた時期もありました。

が、ただ荒っぽいばかりでは世界的大ヒットにならなかったはず。『GTAⅢ』がそれ以前の、ただマップが広いゲームと決定的に異なっていたのは、「そこで暮らしたい」と思わせる世界のあり方でした。

まず、見下ろし画面を2Dから3D化したことで没入感が増し、世界に入り込めるように。そして舞台となるリバティーシティの街は、車で走っていると次々と景色が変わります。はるか遠くに見えていたランドマーク(特徴ある場所)へは本当に赴くことができ、街角ではいつも何か事件が起こり、ミッションをしていなくても充実した時間が過ごせるのです。

しかもさまざまな乗り物に乗り降りでき、住民とは「タクシーに客として乗せる」など平和的な関わりも可能です。そうした多彩なアクションやビジュアルを破綻なくみせたカメラワークの巧みさも驚きでした。

そんな『GTAⅢ』に先がけていたのが、日本のセガが1999年に送り出した『シェンムー』シリーズ。主人公は3Dのフルマップで再現された横浜の街を気ままに歩き、お婆さんを助けたりガチャガチャを回したり自由に過ごせる。

また住人の生活まで再現され、彼らがコンビニで朝食を買い、歩いてバス停に行って出勤し……と振る舞う姿を見ることができたのです。ただし、『GTAⅢ』よりマップが狭く、自由度も低い印象はありました。

ともあれ『GTAⅢ』の大ヒットは、「オープンワールドゲームが3D化してこそ魅力を発揮できる」ことや、「広大で途切れ目のない3Dのフルマップが、市販のゲーム機(当時はPS2)で十分に動く」ことを証明してみせたのです。『シェンムー』は、少し早すぎたのかもしれません。

傑作オープンワールドゲーム三選

オープンワールドゲームに共通するのは「移動を中心とした自由度の高さ」ですが、タイトル毎に重きを置いている面白さの要素はそれぞれ異なっています。各作品のクリエイターが制約なく発想を広げられることも「オープン」なのです。

次に、より抜きのオープンワールドゲーム3選と、それぞれの面白さを紹介していきましょう。

1.『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』

歴史ある「ゼルダの伝説」シリーズにして、国産オープンワールドとしても大注目を集めたタイトル。その完成度ややり込みの深さから、発売から数年後の今なお根強い支持を勝ちえています。

舞台はハイラル王国、主人公は緑の服を着たリンクが厄災ガノンの討伐とゼルダ姫の救出を目指して旅立つ。そうした骨子は受け継ぎながら、「視界に入る場所はすべて行ける」が実現しています。崖を登ったり滑空したり泳いだり、どれも「がんばりゲージ」の管理がものをいう分かりやすさ。

敵クリーチャー達も独自の生活を営み、まるで実世界の中にいるかのような没入感。そしてスタート直後からラスボスのいる場所に(やりようによっては)直行できることが、全世界のプレイヤーを驚愕させました。続編の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は2023年5月12日発売予定で、こちらも注目でしょう。

2.『Ghost of Tsushima』

鎌倉時代、元軍の猛攻にさらされた対馬を舞台とした時代劇オープンワールド。生き延びた侍・境井仁が故郷を取り戻すために元軍に立ち向かうものの、初めはたったの1人。そこで教えられた武士の誉れを捨て、闇に紛れて敵を倒す“冥人”に身をやつす……というストーリーの奥深さ。

そんな孤独な戦いのなか(味方も徐々に増えていきますが)駆けめぐる対馬の広さと自然の美しさ。敵の拠点を探す途中に温泉を見つけて浸かったり、名所と巡り会っては和歌を詠み、キツネが案内してくれた先には御利益のある祠があり。

緊張感あふれる戦いと、その合間に癒される絶妙のバランス。それにプレイヤーが死んだり、対馬の端から端までファストトラベル(瞬間移動)するときもロード時間がすさまじく短く、“待ち”のストレスがほとんどないのも素晴らしいのです。

3.『エルデンリング(ELDEN RING)』

フロム・ソフトウェア開発による『ダークソウル』シリーズの流れを汲む大作アクションRPG。フロムのいわゆる「死にゲー」(非常に難しく、たびたび死ぬ)の過酷さは手加減ありませんが、オープンワールド化により「いったん強敵から逃げて、寄り道」がしやすくなりました。

スタート直後でも易しめのダンジョンはいくつも近くにあり、そこでレベルを上げて装備を充実させ、一度は敗れた強敵に再び挑むこともできます。また「遺灰」で強力な魔物などを味方にできたり、他のプレイヤーを召還して協力してもらうこともできるほか、凶悪なボスを弱体化できるアイテムも用意されており、アクションゲームが苦手でも心折れにくい優しさが垣間見られるのです。

そしてエリアごとに個性あふれる風景や、マップのどこからでも見える「黄金樹」の美しさ。親切なガイドはなく迷うことも多いのですが、それも初期の荒削りなオープンワールドゲームを思わせて、どこかしら懐かしく感じられる一作です。

オープンワールドゲームはハマりすぎに注意

オープンワールドゲームはハマりすぎに注意

オープンワールドゲームを遊ぶ上で注意すべきこと、その1つには「マシンに大きな負担が掛かりやすい」ということです。広大なマップを途切れなく移動できる、つまりデータを読み込みできるストレージや、遠くにあるランドスケープや近くにある細部を描くためのグラフィック表示能力が必要となりやすい。そのため、PC用タイトルであれば、なるべくマシンパワーやSSDの残り容量に余裕がある方が快適に遊べます。

最初から家庭用ゲーム機向けに開発されているタイトルであれば、そのマシンに最適化された設計がされているはずで、さほどの心配はありません。もっともマルチプラットフォーム(多機種に対応)であれば、ソニーならPS4よりPS5、マイクロソフトならXbox Series SよりSeries Xという風に、できれば高価な機種を選ぶ方がいいでしょう。

そして最大の注意点は「時間を使いすぎない」ことです。よくできたオープンワールドゲームは、どこまで行っても景色を見ているだけで飽きが来ない。その上、あらゆる場所に充実したミッション、感情移入できるドラマがたっぷり用意されていることもあり、気が付けば徹夜していることも珍しくありません。

勉強や仕事とのバランスを考え、睡眠時間を犠牲にせず、ほどよい距離感でオープンワールドと付き合いたいところです。

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※上記掲載の情報は、取材当時のものです。掲載日以降に内容が変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。

  • ライター

    多根清史

    1967年、大阪市生まれ。京都大学法学部卒業。著書に『ガンダムと日本人』『教養としてのゲーム史』、共著に『超ファミコン』などがある。ゲーム・アニメ・マンガ、政治・ITなど幅広いジャンルで活動中。

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