記憶に残る日本のデマ事件からネットリテラシーを学ぶ

昨今、世界中を賑わせている新型コロナウイルス。一部の国では外出禁止令を発表、日本でも不要不急の外出を控える地域があったりと大変な騒動になっています。この緊急事態を乗り越えるため、迅速かつ冷静な対応や行動に移すことが必要ですが、そこで大切になるのは「正しい情報」。このウイルス騒動に関しては、様々な憶測が飛び交っており、正確な情報を掴むことが難しくなっています。

その端的な例が、日本中をパニックに陥れた「トイレットペーパー・ティッシュペーパー売り切れ騒動」。これは、SNSで発信された一つのデマが発端と言われており、日本中のスーパーからトイレットペーパーやティッシュペーパーが無くなりました。この「SNSで発信されたデマ」という話も、「この人が最初に発信した」というデマが出回り、罪なきユーザーに批判の矢が向けられる事態にも発展。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか? 今回は過去にインターネットや噂から始まった国内のデマ事件・フェイクニュースを挙げながら、考えていきたいと思います。

インターネットで広まったデマが、事件に発展した3つの騒動まとめ

スマイリーキクチ中傷被害事件

まず、ネット上で広まったデマから起こった事件で外せないのが「スマイリーキクチ中傷被害事件」。

【概要】
お笑いタレントのスマイリーキクチ氏が、インターネットで1999年の春頃から長期間にわたって誹謗・中傷被害を受けた事件。その内容が1989年に起こった「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の実行犯であるという事実無根のデマ。しかし多くの人が鵜呑みにして、「殺人事件のことを(お笑いの)ネタにした」などデマの内容がどんどんと過熱しました。2009年に書き込みをした数名を書類送検し、犯人は不起訴処分になりましたが、事態は終息の一途を辿りました。
インターネットにおいて、1人の人間に対して誹謗・中傷をした複数の加害者が、一斉摘発された日本で初めての事件です。

――参考:ウィキペディア「スマイリーキクチ中傷被害事件」

電子掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」から始まったこのデマ。「事件が起こったところに住んでいたから」「犯人と同年代だから」そんな理由で決めつけられたと言われています。当時、キクチさんは「しばらくしたら収まるだろう」と無視をしていたようですが、内容はどんどんと過熱していきました。
電子掲示板の匿名性が高かったこともデマ拡散を助長させたと考えられます。責任を感じることがなく、思い付きで書き込みをしてしまうのでしょう。それを見た人も、「ほかの人もやってるから」「話題になっているから」と無責任に広めていく。そこにはある種の正義感があると思いますが、発信する情報がデマであると、広めた行為が悪に変わってしまう可能性があるのです。
さらに収まったと思っても、何かのきっかけで「スマイリーキクチ」と検索すると出てくる情報を信じてデマが再燃、約20年経った今でも書き込みがあるのだとか。「人の噂も七十五日」、これはネットには通用しないのです。

熊本地震ライオン脱走事件

次はSNSで話題となった「熊本地震ライオン脱走」事件。

【概要】
2016年4月に発生した熊本地震の直後、街中を歩くライオンの写真とともに「おいふざけんな、地震のせいで うちの近くの動物園からライオン放たれたんだが 熊本」とツイッターに投稿がありました。
2万人以上にリツイートされることとなり、熊本市内の動物園に問い合わせが殺到。しかし実際にはデマであったことが発覚し、熊本市動植物園の職員を問い合わせ電話に対応させるなど、業務を妨害した疑いで、これを投稿した当時20歳の男性が逮捕されました。

投稿された当初、ネット上では出来の悪いデマと嘲笑されていましたが、片や信じる人も多く、この緊急事態を「早く広めなくちゃ」と使命感に駆られて一気に拡散していったのでしょう。
投稿した男性は面白半分で行ったらしく、投稿した写真もネット上にあったものを無断で使用したとのこと。のちにこのライオン写真は、日本とは全く違う南アフリカで撮影されたものであることが判明しています。

常磐道あおり運転事件

あおり運転に対する危機感が高まった皆さんの記憶にも新しい2019年8月の「常磐道あおり運転事件」。この時に報道されたドライブレコーダーの映像から「ガラケー女を特定した!」とするフェイク情報です。

【概要】
茨城県の常磐自動車道の守谷サービスエリア付近で起きたあおり運転事件。2019年8月に起こったこのあおり運転事件は、車間距離を詰めたり前方へ入り急ブレーキを掛けるなど、数キロに渡って犯人があおり運転を行い、被害者が車を止めると犯人の男も停車。犯人の男は「殺すぞ」と怒鳴りながら被害者の顔面を殴るなど暴行を加え、犯人の車に同乗していた女がその様子をガラケーで撮影していました。
被害者のドライブレコーダーに一部始終が録画されており、犯人の男女について逮捕されるまで注目が集められていたのです。
ネット上ではすぐに犯人探しが始まり、犯人の女性であると女性の実名が晒されましたが、それはまったくの別人。しかしこの情報を多くの人が信じて拡散されていきました。本物の犯人が逮捕され、騒動は収縮。
その後、犯人扱いされた女性は、ネット上でデマを流したとして投稿者や拡散した人たちを起訴し、勝訴しています。

この事件は「犯人を見つけたい」という善意からでしょう。何度もテレビでドライブレコーダーの映像が流れることで、義憤に駆られた人たちが多かったことも挙げられそうです。別人であるのに特定された根拠は、「SNSに上がっていた画像の服装が似ていた」「先に逮捕された男性がSNSをフォローしていた」などの情報だったようです。たったこれだけのことで犯人に仕立てあげられてしまったのです。

人から人へ。情報は伝わるたびに変化して、デマへと変わる

豊川信用金庫事件

ではなぜ、このようなデマが広まっていくのでしょう。これを解明するために参考となるのが「豊川信用金庫事件」です。

【概要】
1973年12月、愛知県宝飯郡小坂井町(現豊川市)を中心に「豊川信用金庫が倒産する」という噂(デマ)が流れたことから取り付け騒ぎが発生。短期間で約20億円もの預貯金が引き出された事件です。警察が信用毀損業務妨害の疑いで捜査を行った結果、女子高生3人の雑談をきっかけとした自然発生的な流言が原因であり、犯罪性がないことが判明しました。

――参考:ウィキペディア「豊川信用金庫事件」

発端は3人の女子高生の雑談から発生しました。豊川信用金庫に就職が決まった1人の女子高生に対して友人が「(強盗が入るなど)信用金庫は危ない」とからかったのですが、本人は経営状態の意味ととらえ、親戚Aに「信用金庫は危ないのか?」と相談。
その親戚Aは、豊川信用金庫のことだと判断して、別の親戚Bへ「豊川信用金庫は危ないのか?」と問い合わせたのだとか。
そこから噂は人を介すごとにどんどんと歪曲し、女子高生同志の会話から4日後には主婦の井戸端会議で話される程度に広まり、「豊川信用金庫は危ない」と断定されるようになったのです。6日後にはついに「潰れる」とまで誇張されました。
ここで仕事の支払いのために豊川信用金庫から預金をおろす人物が現れたことで事態は急速に展開。さらに噂を聞いたアマチュア無線愛好家が無線によって広範囲に広げたため、預金をおろす人が殺到。わずかな時間で5000万円もの預金が引き出されたのだとか。

伝言ゲームのように、人から人へ伝わる間に「危ないのか?」から「危ないらしい」「危ない」「潰れる」に変わっています。当時はオイルショックにより日本全体が不景気となっていたことが、噂が広まる下地になっていると考えられています。誰一人として悪意はなく、単純な不安からいつの間にか変化していったのです。そして間違った情報が無線などの電波に乗ったことで広範囲に広がっていく……。

これら事件の背景には、社会的・精神的不安がつきもの。「トイレットペーパー・ティッシュペーパー売り切れ騒動」では新型コロナウイルスが、「スマイリーキクチ中傷被害事件」や「常磐道あおり運転事件の犯人捏造」では凄惨な事件、「熊本地震ライオン脱走」では熊本地震が、不安を増加させています。
また昨今ではネットを介することで迅速かつ広範囲に情報が広まっていくのです。

まとめ

ネットやSNSの発達でより情報取得&発信が容易な現代だからこそ、情報の正誤を判断するネットリテラシー能力が、必須スキルとなっているのではないでしょうか。
不安な時ほど、落ち着いてしっかりと情報を精査。情報源を確認して、複数の信頼できる情報源を照らし合わせることが大切です。

では、デマ情報に踊らされないために必要なことは? それは「ソ・ウ・カ・ナ」の4つ心得です。新型コロナウイルスのデマ騒動で有名になったので、知っている人も多いと思います。

1:結論を「ソクダンするな」
2:ゴッチャにして「ウのみするな」
3:一つの見方に「カタよるな」
4:スポットライトの「ナカだけ見るな」

頭文字を取って「ソ・ウ・カ・ナ」と覚えます。これは情報リテラシーの専門家であり、インターネットメディア協会メディアリテラシー部門の理事をされている下村健一氏が提唱している理論。こう見れば当然のことですが、これをできる人はまだまだ少ないと思います。

そして、デマ情報が流れるようなサイトにアクセスしないことです。それぞれが確かだと思う情報源を確保しておきましょう。また、デマ情報だけではなく、あなたを狙うもっと危険な詐欺サイトや不正改ざんサイトから身を守るためにインターネット詐欺対策ソフトを入れておくのも一手です。

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「自分は大丈夫」と思うことが一番危険です。自分を守るためにもフェイクニュースに気 を付けましょう。

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