初心者でも90分でゲームが作れる!?ゲーム開発エンジン「Unity」の画期的な点とは!

アメリカの「Unity Technologies」が提供するゲームエンジン「Unity」。ゲームの制作現場で多数採用されており、「PlayStation」や「Nintendo Switch」といった家庭用ゲーム機、WindowsPCなど多くのハードウェアに対応しています。
特に「Unity」はiOS、Androidのスマホゲームの開発環境として高いシェアを持っています。『ポケモンGO』『原神』『Among Us』などの人気タイトルが「Unity」で制作されています。
今回は「Unity」について、ゲーム・IT・CG・Webなどのクリエイターのプロを育成する「ECCコンピュータ専門学校」ゲーム・クリエイティブカレッジ専任教員の吉野広二先生と、ゲーム開発エキスパートコース・ゲームプログラム専攻学生の茂野創太郎さんにお話を伺ってきました。

ライター:澤田将太

ゲームエンジン「Unity」とは?

――本日はよろしくお願いいたします。ゲームエンジン「Unity」とは、ゲーム制作において、何をするものでしょうか?

吉野先生:ゲーム開発にはすごく複雑な流れがあります。「Unity」が登場すると、煩わしい作業の多くがスムーズに行えるようになりました。
ゲーム開発ではプレイヤーキャラクターの操作や敵キャラクターのAIなどゲームの面白さに直接繋がる部分以外に、グラフィックスやサウンドといった表現部分の開発があります。
この表現部分の開発は高度で深い知識を要するのですが、この部分を「Unity」が担ってくれるのでゲームの面白さに時間をかけることができるようになりました。今のゲームのプラットフォームといえば「PlayStation」「Nintendo Switch」「Xbox」「パソコン」「スマホ」など多岐にわたります。本来ならそれぞれのプラットフォームの形式に落とし込んだ制作が必要です。「Unity」はもともとワンソースでマルチプラットフォームに対応できるように作られているので、よりゲーム内容に集中して制作できるのです。

――「Unity」の登場で、誰でもゲームが簡単に作れるようになったのでしょうか?

吉野先生

吉野先生:最近のゲームはハイクオリティになっていて、物理シミュレーションだったり、美しいグラフィックスや世界観を表現するには、深い知識が必要です。でも「Unity」には、それらの制作を簡単にできる機能が搭載されているので、使い方さえ覚えればある程度は、誰でもゲーム制作を行えるでしょう。

――初心者も簡単に操作することが可能でしょうか?

吉野先生:「Unity」はマウスでドラッグ&ドロップするだけで開発中の画面をプレビューできるので作りやすいといえます。表示させた画面で操作しながらプログラムを変更していけるので直感的にゲームを作れます。ECCコンピュータ専門学校は、4年間の授業でゲーム制作を学んで行くのですが、1年生の時から教わり、初心者でも触れやすいものになっています。

ゲーム開発をよりスムーズにした「Unity」

――「Unity」は他のゲーム開発エンジンと比べてどこが画期的だったのでしょうか?

吉野先生:今まではプログラム言語を書くためのソフトでコードを書き、コンピュータが理解できる実行ファイルに出力する「コンパイル」という処理が必要でした。そしてゲームをスタートさせて、コードを書いた部分を確認する……ひたすらこの流れの繰り返しでした。「Unity」だと画面上のオブジェクトに対して作成したプログラムを簡単に付け加えることができ、スタートボタンを実行するとその場ですぐにプログラミングした動きが確認ができる。そこが画期的でした。

――ECCコンピュータ専門学校では「Unity」での授業がほとんどなのでしょうか?

吉野先生:「Unity」を使用する授業もありますが、プログラム言語はもちろん、数学やゲーム内での応用方法など本質的なゲームの作り方を重点的に教えています。そのため「Unity」を使わない従来の泥臭い方法も教えています。実際のゲーム開発現場で「Unity」を使える人材は魅力的だと思いますが、今後より便利なゲームエンジンが出てくるかもしれない。そのため「Unity」の使い方を学んでもらうだけではなく、理論を知ってほしいと考えています。

――ゲーム開発の根本から教えていくということですね。

吉野先生:新入生には初め「Unity」を使ってもらって、「ゲームの開発にはこんな機能があるんだよ」「現場ではこういう開発でやってるんだよ」ということを教えています。それを理解してもらった上で、自分たちでも「Unity」のようなゲームエンジンを作れるような技術まで身につけてもらうのが理想です。ここにいる茂野くんは、「Unity」の勉強を始めて、その後実際に自分で「Unity」のようなゲームエンジンを作り、就職を決めてきました。

――すごいですね、ご自身でゲームエンジンを作られたんですね。「Unity」を触られてみていかがでしたか?

茂野さん

茂野さん:インターネット上で公開されている、「Unity」のまとめ記事などを見ながらでも簡単に進められたので、かなり取っつきやすかったと思います。横と縦スクロールの2Dゲームをはじめは作ってましたね。画像を用意してドラッグ&ドロップするだけ、再生ボタンを押したらどのように動くのか結果が見れるのも引き込まれるきっかけになっていたんだと思います。

――「Unity」の登場でゲーム開発自体がより注目されるようになったのでしょうか?

吉野先生:そうですね。最近では「Nintendo Switch」で『ナビつき!つくってわかるはじめてゲームプログラミング』というゲームソフトが発売されました。これは「Nintendo Switch」の中でプログラムを繋げるだけで、自分のオリジナルゲームが作れるというものなんです。簡単に制作できる分、もっと高度なことがしたいと思う方がプログラム言語を覚えてどんどん上達していく。今の時代は自分が作ったものを公開していろんな人に見てもらえる環境が整っているので、欲求がどんどん膨らんでいくのだと思います。そういった若い人のものづくりに対してのモチベーションが「Unity」にも繋がっているのかなと思います。

「Unity」で開発されたゲームタイトルは?

――ちなみに、「Unity」で開発されたゲームタイトルはどんなものがあるのでしょうか?

吉野先生と茂野さん

吉野先生:『ポケモンGO』『Among Us』『コール オブ デューティ モバイル』、いろんなゲームが「Unity」で開発されていると聞きます。

茂野さん:スマホゲームの開発エンジンとしての「Unity」のシェアは大きいと思いますね。

吉野先生:「Unity」以前のスマホゲームの開発では、開発機がハイエンド機ではなくとも問題ありませんでした。プレイヤーが持つスマホ側の問題で、高精細なグラフィックスを作っても当時はうまく再現できなかったりバッテリー消耗がひどくなったりしていたためです。だからこそ日本国内でのスマホゲーム開発は「Unity」が浸透したんじゃないでしょうか。今はハイエンドのゲームエンジン「Unreal Engine」を使ったグラフィックスが綺麗なスマホゲームもあるんですけど、昔からのノウハウを活かせるので「Unity」が広く利用されている部分はあると思います。

「Unity」の使い方を解説

――簡単なゲームならどれくらいで制作できるのでしょうか?

吉野先生:「Unity」には「物理エンジン」がはじめから入っています。空間に球を置いたら、球が勝手に重力で落ちて行くなど、物理シミュレーションができるんですね。
例として、壁を配置して球が壁に跳ね返って、マウスでクリックしたら消える……といったゲームを私の初めての授業で作ってもらっているのですが、初心者でも90分あれば作れると思います。

制作風景

――本当に簡単にできるんですね。授業で制作したゲームを何か見せていただくことは可能でしょうか?

茂野さん:このゲームは1年生のときに、チーム制作で2週間ほどで制作したものです。3Dグラフィックスは他の学生が作ってくれたんですが、プログラミングはすべて一人で行いました。

制作したゲーム

吉野先生:画面右側の数値がキャラクターを制御するためのパラメーターです。数値を触って、キャラクターの動きをつけていきます。

キャラクターの動き
パラメーターで速度の数値を編集

茂野さん:キャラクターの動く速度を速めたいときは、パラメーターで速度の数値を編集して、動かすと先程より早くキャラクターが動くようになります。従来の作り方だと一度ゲームを止めて、パラメーターを編集し再度実行する工程が必要でしたが、このように感覚的に制作と実行ができます。もともとこの制作は、「Unity」で制作されていないゲームを模して作ったものです。

――ということは、実際にそのゲームを目で見て感覚的に作られたのですか?

茂野さん:そうですね。「Unity」で制作工程などは公開されていないので、見た感じの動きの速さだったり、動きの質を見て制作していきました。こういうことを直感的にできるのが「Unity」のメリットだと思います。

まとめ

今回は「ECCコンピュータ専門学校」で「Unity」についてお話をお伺いしました。
「Unity」のように手軽に始められるツールの登場で、ゲーム制作はプロだけが制作するものではなくなったのかもしれません。ゲーム制作に興味のある方は「Unity」から始めてみてはいかがでしょうか?


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※上記掲載の情報は、取材当時のものです。掲載日以降に内容が変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。

  • ライター

    澤田将太

    元テレビマンの経験を活かし、映像ディレクターとしても活動。現場でも活用する映像系コンテンツや体当たり企画を主に執筆。

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