世相を反映する辞書として辞書通から愛される『三省堂国語辞典』。2021年12月17日に発刊される「第八版」からは「パソコン通信」「BBS」が削除されると一部で話題になりました。このようなインターネット用語で有名なのは、掲示板などで使われていたネットスラングではないでしょうか。
今回はネットスラングがどのように誕生し、進化してきたのか。歴史を紐解き、時代に合ったネットスラングの使い方を紹介します。
ライター:佐倉一史
ネットスラングの誕生
ネットスラングとは、インターネット上のコミュニティで使用される俗語を指しており、日本では1980年ごろから使われ始めたといわれています。「リア充」や「ググる」「(笑)」などもネットスラングが発祥と言われています。
ネットスラングの全盛期は2000年ごろではないでしょうか。1999年に電子掲示板「2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)」がサービススタート。
SNSがまだ発達していなかった時代、不特定多数による活発なインターネット上のコミュニケーションは電子掲示板が中心でした。いくつものスレッド(話題)が立てられ、同一スレッドにいる人間同士は同じ思いを共有するものとして一種の仲間意識があったように思われます。仲間内でしか分からない言葉を少しいじり、半ば部外者と区別する暗号のように使用したのかもしれません。もちろん仲間同士の会話の中で打ち間違えやふざけあった会話の中から生まれた言葉もあると思いますが、いずれもインターネット上での集団意識の中で生まれたのだと思います。
時代は流れSNSなどオープンなインターネット上のコミュニティが増えるにつれ、ネットスラングが世に出る機会が増えたのではないでしょうか。相手を否定するような強いスラングは排除され、「(笑)」や「ググる」などの汎用的な言葉が残っていったと考えられます。
2000年代に流行したネットスラング集と意味
2000年代に流行したネットスラングの10個を、その意味と一緒に解説します。
1.今北産業(イマキタサンギョウ)
本来の漢字は「今来た三行」。意味としては「このスレッドに今来たばかりの俺に三行で説明してくれ」を略したスラングです。主に2ちゃんねるで使用されていました。
2 . 香具師(ヤシ)
「あいつ」や「奴(ヤツ)」といった意味で使われていました。字面でいくと本来は祭りなどで屋台を出す人ですが、語感の「ヤシ」から「シ」⇒「ツ」となり、「ヤツ」の意味で使われるようになったようです。
3 . もちつけ(モチツケ)
「落ち着け」と打ちたいところを、慌てて「もちつけ」と打ったのが始まりといわれており、「もう少し落ち着け」といった意味で使われていました。
4 . ノシ(読みなし)
手を振る動作を表した顔文字で、「バイバイ」や「またね」などお別れをする場面で使われました。元々は「アスキーアート」と呼ばれる、文字・数字・記号のみで作られた絵で使われていましたが、他の顔文字と一緒に使われはじめ、ついには単体でも使われるようになりました。
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5 . 安価(アンカ)
主に2ちゃんねるの「ニュース速報板」で使われている言葉で、ネット掲示板の返信を指す「アンカー」を当て字にしたスラングです。特定のアンカーを指名して、スレッドを進行する「安価スレ」などもあります。
6 . ネ申(カミ)
今でもほめ言葉や感謝の意味として使われることのある「神」という言葉ですが、インターネットでは部首と偏を分けて打たれることが多かったのです。ワープロ(ワードプロセッサ)では強調文字が幅を2倍にした倍角文字として表記されており、これを習って別の文字で表現するようになったという説があります。
7 . キボンヌ(キボンヌ)
何かを希望する、請い願う意味で使われています。「詳細キボンヌ」などのように活用します。起源は2000年のシドニー五輪に出場していた金沢イボンヌ選手の名前をもじったともいわれています。
8 . 逝ってよし(イッテヨシ)
2ちゃんねるが生まれる前からあったとされる最古級のネットスラング。意味としては「どこかへ行ってくれ」と空気を読めない人に対するツッコミとして活用されていました。
9 . ~なう(~ナウ)
「Twitter」が登場し始めた2008年以降からよく使われるようになり、2009年の流行語大賞の候補にもなったこのスラング。意味は皆さんもご存じの通り「今~をしている」などのときに使われていました。
10 . カキコ(カキコ)
インターネット上の掲示板などへ書き込む行為を指す名詞。動詞として使用する場合には「カキコする」と使われていました。またスレッドに初めて書き込みをする際には「初カキコ失礼します」などの文言がないとマナー違反として扱われることもあったようです。
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主に2010年代以降使われるネットスラングを解説
2000年代を生き抜き、2010年代以降も使われている(であろう)ネットスラングや、SNSで最近新たに追加されているスラングを10個厳選して、その使い方と一緒に紹介します。
1 . w(読みなし)
主に文末に付けて「(笑)」と同じような意味で使われ、「w」の数でその笑いの強さを表しています。見た目が草に似ていることから「草」と呼ばれ、連続させると芝生のように見えるため「芝」と呼ばれたりします。
・「w」の使用例
未だに「今北産業」使ってるとかwww
2 . 8888(パチパチパチパチ)
拍手の「パチパチ」という音と「8(ハチ)」を掛けたスラングで、そのまま拍手を意味しています。ニコニコ動画やYouTubeなどの動画のコメントやお祝いコメントをツイートするときなどに使われます。しかし多用すると「荒らし」と勘違いされることもあるので要注意です。
・「8888」の使用例
今日は推しが初のテレビ出演!(888888)
3 . ググる(ググる)
「Googleで調べる」の略語で、Googleに限らず検索エンジンを使って「インターネットで検索する」といった意味で使われます。元のスラングでは「ggrks(ググレ〇ス)」と言われていましたが、スラングが一般的になるにつれて変化していきました。
・「ググる」の使用例
ネットスラングを知らなかったけど、ググったらいっぱい出てきた。
4 . ワンチャン(ワンチャン)
「ワンチャンス」を略した若者言葉として有名です。「可能性は限りなく0に近いが、望みが無いわけではない」といったときに使われます。しかし特に深い意味もなく使われる場合もあるので、前後の文章の意味をしっかりと理解して判断しましょう。
・「ワンチャン」の使用例
今日の金曜ロードショー、仕事が早く終わればワンチャン間に合うかも。
5 . はにゃ?(ハニャ?)
若者言葉の一つで、会話中に疑問を感じたときや意味が理解できなかったときの感嘆詞として使われます。芸人でありYouTuberである丸山礼さんのとあるキャラクターが由来とされています。若者言葉のため、大人が使うと大けがを負ってしまうこともあるので要注意です。
・「はにゃ?」の使用例
休日だからって二度寝したら、16時になっていた、はにゃ?
6 . リムる(リムル)
TwitterやInstagramなどのSNSでフォローしていたアカウントのフォローを外すことを、除去するという動詞「リムーブ(remove)」を用いて表現するようになりました。
・「リムる」の使用例
この人のインスタ、投稿内容が変わってきたからリムろうかな?
7 . スパダリ(スパダリ)
整った容姿に高身長、高学歴、大人の包容力があるなど……、高スペックな男性を指す言葉で「スーパーダーリン」の略称。「理想の彼氏」といった意味合いが強く、人によってその条件が異なるため、明確な定義がありません。
・「スパダリ」の使用例
あのアニメの主人公がスパダリすぎる。
8 . ひよってるやついる?(ヒヨッテルヤツイル?)
2021年、映画化された『東京リベンジャーズ』に登場するこのセリフがSNSを中心に使われています。仲間を鼓舞してチーム一丸となって敵に立ち向かっている姿が反響を呼び、次の日の学校や仕事に対して仲間たちを鼓舞するように活用。合わせて「いねぇよな?」を使いましょう。
・「ひよってるやついる?」の使用例
明日の会議、ひよってるやついる? いねぇよな!?
9 . ~してもろて(~シテモロテ)
関西圏の方は普通に使う言葉だと思いますが、これもインターネット上で使われるスラングとなっています。意味としては「~してください」と何かをお願いするときに文末で用います。流行のきっかけは、様々なYouTuberが動画内で口癖のように使っていたことから、全国的に使われるようになったといわれています。
・「~してもろて」の使用例
突然大声を出すのはびっくりするからやめてもろて。
10 . 飛ぶぞ(トブゾ)
主に「精神が飛んでしまうほど美味しい」という意味として食べ物の感想を伝えるときに使われますが、派生して音楽や映画など他人に何かを紹介したい際「最高に良い」といった意味で使われることもあります。元ネタは関西ローカルで放送されたバラエティ番組で、元プロレスラーの長州力さんがホタテを食べた時に「食ってみな、飛ぶぞ」とコメントしたことに由来しています。
・「飛ぶぞ」の使用例
このパスタ食ってみな、飛ぶぞ
まとめ
現在30〜40代の方にはいくつか懐かしいスラングもあったのではないでしょうか。しかし今の若者たちのネットスラング(若者言葉)やその使い方は日々進化しています。最新ネットスラングを理解して、適切なコミュニケーションをとっていきませんか?
(2022年2月14日追記)
三省堂国語辞典の編集者の方、読者の方からご指摘いただき不正確な記述を削除いたしました。今後とも精確な情報の発信に努めてまいります。
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