レインボーシックス シージとは?本物の戦場を感じるFPS

2015年に発売された『レインボーシックス シージ』(以下『シージ』)は、ここ数年さまざまなFPS(一人称視点シューティングゲーム)の新作が登場してきたなかで、今なお根強い人気を維持しているタイトルの1つです。特にeスポーツでの盛り上がりはめざましく、海外でも世界大会が何度も開かれているほか、日本でもゲームファンのための祭典・闘会議にてPS4版の国内最強チーム決定戦が行われたこともありました。
そんな『シージ』の魅力とは何なのでしょうか?

ライター:多根清史

発売から7年、今なお人気の『レインボーシックス シージ』

『シージ』がどんなゲームかといえば、世界各国の精鋭たちから構成された対テロ特殊部隊「レインボー」たちの活躍を描いたもの。イギリスやアメリカ、ドイツや日本などの特殊部隊から個性豊かなキャラクター(オペレーター)を選び、敵味方ともに5人のチームを組み、それぞれ「攻撃」側と「防衛」側に分かれて集団戦を繰り広げます。そして1ラウンド毎に攻守を交代して勝ち数を競うことになります。

そう説明すると「他の対戦型FPSとどこが違うの?」となりそうですが、『シージ』が何年も第一線に残り続けてこられたのは、他のゲームにないスペシャルな面白さを持っていたからです。その魅力の原点は、約20年前にまで遡ることになります。

『シージ』は初代の持つリアリズムへの原点回帰

「レインボーシックス」シリーズの歴史は古く、初代のPC版が発売されたのは1998年のこと。小説『レッドオクトーバーを追え!』などのトム・クランシー氏がデビュー前からゲームに興味を抱いており、自らゲーム開発会社Red Storm Entertainmentを設立。そして小説とゲームで同時展開したのが初代『レインボーシックス』だったのです。
レインボーシックス=虹の色のように様々な特技を持ったスペシャリスト達6人(英米では虹は6色と考えられているため)が集まった、というわけです。

レインボーシックス

初代の難易度は超シビア

原作者がリアリズムにこだわりがあるだけに、初代から難易度は非常にシビア。歯ごたえのあるゲームが好まれる傾向がある海外でさえも「難しすぎて苛立たしい」とのレビューがあったほどです。それでも、まず作戦説明があり、適材適所のメンバーを選び、3Dマップに基づいて作戦計画を立て……といったプランニングの骨太さは前例がなく、商業的にも成功を収めて「タクティカルシューター」(その場の反射的な動作よりも、戦術や注意力がモノをいうシューティング)のジャンルを打ち立てました。

しかしシリーズを重ねるごとに一般ユーザーに歩み寄り、撃たれたときのダメージが控えめになったり、敵が発見しやすくなったり、家庭用ゲーム機版ではプランニング要素がなくなったりと「普通のゲーム」に近づいていきました。

そして『レインボーシックス ベガス2』が2008年に発売されてから、シリーズはいったん休止(6作目は発表後に開発中止)……。
数年ぶりに登場した新作『シージ』は、再び高難易度やプランニング要素の強化、チーム戦に重点を置いたことで「原点回帰」と昔からのファンにも歓迎されたのでした。

銃弾

銃弾一発で倒れ、マップの状況が刻々と変わる籠城戦

現在の『シージ』は他のFPSとどう違うのか。
分かりやすい特徴の1つは「銃弾一発で倒され、リスポーン(復活)はない」ということです。一定時間のうちに味方に助けてもらわなければ退場し、戦闘に参加できなくなります。それぞれ役割を担う5人のうちの1人が欠けてしまうことから、「命の重み」はとても大きいのです。
もう1つは「シージ」=籠城戦という名前が示すとおり、戦う舞台となるのは「建物の中」。近ごろ流行しているバトルロイヤル系FPSは広いフィールドに数十人が散らばって撃ち合いますが、それとは真逆の狭さ。攻撃チームは防衛チームが陣取る屋内に乗り込み、ドアの向こうに罠がないか、上や下の階に気配がないかを探り、壁を挟んで敵味方が隣り合うような空間で戦うことになります。

そして「マップの状況が刻々と変わる」ということも大きなポイントです。「シージ」にも他のFPSのように複数のマップが用意されていますが、それぞれ破壊したり、補強できる部分が存在しています。たとえば壁に穴を空けて敵を撃つ、ないし床に穴を空けて下を見ながら待ち伏せをする。その逆に破壊可能な壁を補強して壊せなくすることもできます。

ゲームが進行して破壊活動あるいは防衛行動が繰り広げられるうち、さっきはなかった狙撃ポイントができることもあり、遮へい物がなくなった場所で敵がまる見えになる場合もあります。そうしたマップ環境の破壊を戦術に組み込めるからこそ、駆け引きがより奥深くなるのです。

駆け引き

マルチプレイには「人質」や「爆弾」など様々なゲームモード

多彩なゲームモードがあるのも『シージ』の大きな魅力です。1人プレイ専用の「シチュエーションモード」もありますが、メインコンテンツといえる5対5のマルチプレイ対戦(チーム戦)には人質、爆弾、エリア確保という3つのモードが用意されています。

最初の「人質」モードは、攻撃側は人質をエリア外まで連れ出せば勝ち、防衛側はそれを阻止すれば勝利というもの。最も「籠城戦」や特殊部隊っぽいモードですね。互いに敵をせん滅しても勝ちではありますが、攻撃側は人質を奪って速攻で脱出したり、防衛側は人質を盾にしたり(人質を死亡させたチームが負け)、人質の有効活用(?)がカギとなります。

次に「爆弾」モードは、攻撃側は爆弾のある部屋にディフューザー(解除装置)を設置して守り抜けば勝ち、逆に防衛側は設置されたディフューザーの解除をめざします。もしもディフューザーが動作すれば攻撃側は全滅していても勝利となる……というのが少し複雑で、初心者にとって最も難しいモードかもしれません。

最後の「エリア確保」モードは決められたエリアをめぐる攻防で、攻撃側がエリア内に侵入して防衛側を排除してから15秒もちこたえれば(エリア内に攻撃側のメンバーだけいれば)勝利。その間に防衛側がエリア内に入ってくればタイマーは止まる。ナワバリの塗りあいをする国産ゲームにもあった対戦モードですね。

これら全ての対戦モードは、どれもが実際に交戦をする「アクションフェーズ」の前に「準備フェーズ」が用意されています。防衛側は壁や床を補強して守りを固め、監視カメラを配置して侵入に備える。かたや攻撃側は偵察ドローンを飛ばして人質や爆弾の位置を調べ、どの部分が補強されているか(「工事」ともいわれる)探りを入れる。銃を撃ち合う前に情報戦が繰り広げられ、勝利のゆくえを大きく左右することになるのです。

勝利のゆくえ

個性豊かなオペレーターと互いの力関係の奥深さ

同じマップでも一試合ごとに壁や床に穴が開いて地形が変わり、いつも違った展開をたどるのが『シージ』の魅力。それをいっそう深めるのが、個性豊かなオペレーター選びです。

オペレーターとは、他の対戦ゲームでいうキャラクターのこと。ロシアの「スペツナズ」やアメリカの「NAVY SEALS」、イギリスの「SAS」、日本の「S.A.T」など所属する特殊部隊もさまざまで、それぞれに経歴や人柄など細かな背景設定もあったりします。

各オペレーターごとに固有の銃も設定されていますが、より重要なのが固有アビリティ(特殊なガジェットを使える能力)です。
たとえば補強された壁は通常の方法では壊すことができず、壊すためには特定のアビリティが必要となります。これを持っているのが「テルミット」や「ヒバナ」、「マーベリック」など一部のオペレーターに限られており、メンバーに加わっていると攻撃側はグッと有利になります。
が、その一方で補強壁を守れるアビリティ持ちもいたりします。「バンディット」というオペレーターが使うショックワイヤーは壁に電流を流して破壊を防ぎ、「ミュート」が操るシグナルディスラプター(電波の妨害装置)は壁にしかけられたブリーチングチャージ(設置型の爆薬)などの遠隔操作機器を無効にする、といった具合です。

オペレーターの能力と組み合わせの戦略性

対戦チームともに「補強壁を壊せる」と「壁を守れる」オペレーターがいれば膠着状態になりそうですが、さらに攻撃側に「サッチャー」がいれば、電子機器に作用するEMPグレネードにより、壁越しにショックワイヤーの破壊も可能。そのEMPグレネードも「イェーガー」のアクティブディフェンスで破壊されたりと、オペレーター同士にもじゃんけんのようなカウンター(力関係)があるわけです。

そうした大勢いるオペレーターの能力を覚え、さらに相性を把握するだけでも初心者にとっては大変であり、なんて難しいゲームかと思うかもしれません。が、ハードルを乗り越えた先に待つ面白さは、『シージ』人気が6年以上も続いていて、全世界的にコミュニティも賑わっていることで保証済みです。もしも試合の途中で倒れても、サポートモード(事前に配置したカメラやドローンにアクセスできる)で仲間に敵の位置を教えたり、ほかの達人たちのプレイを見て学ぶことができ、すべてが貴重な経験値となることでしょう。


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※上記掲載の情報は、取材当時のものです。掲載日以降に内容が変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。

  • ライター

    多根清史

    1967年、大阪市生まれ。京都大学法学部卒業。著書に『ガンダムと日本人』『教養としてのゲーム史』、共著に『超ファミコン』などがある。ゲーム・アニメ・マンガ、政治・ITなど幅広いジャンルで活動中。

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