【後編】5Gで未来はどうなる? ~想像でしかなかった未来がすぐそこまで来ている~

前回、「5G」に至るまでの移動通信システムの歴史を「1G」から順になぞってきました。
そして今回はついに「5G」。5G技術の世界標準化をけん引した中心人物の一人、東京工業大学工学院の阪口 啓教授が語る「とてつもない進化」とはいったい何なのか。
それを、明かしていきたいと思います。
5G、どうなる?!

※新型コロナウイルス感染拡大予防のため、オンラインでのインタビューを行いました。

爆発的に増えたデータ量、もう「4G」では間に合わない!

――「5G」についてお伺いする前に少し気になっていたことがありました。移動通信システムがリリースされる周期なのですが、1980年代に「1G」が開始されて、「2G」「3G」「4G」「5G」とおよそ10年周期でリリースされてきているのですが、なにか理由があるのでしょうか?

それぞれの世代をリリースする時に新しい周波数を使用するんですが、周波数を変える場合には国連の決議が必要なんです。国連の会議は4年に1度で、さらに何か新しいものを導入する時には必ず2回も会議が必要となるんです。
まず、「新しいシステムを作る」ということを決議するのと、「その新しいシステムにどの周波数を使うか」ということで決議が必要なんです。なので、新しいシステムを作るのに最短で8年必要になります。
「5G」については、2015年に「新システムへの要求条件」を決める1回目の会議があったんです。そして2019年11月に周波数が決められました。
どの時期に商用化するのがいいかなということを協議した結果、せっかくオリンピックがあるからその直前にしようということで2020年3月に決まったんです。

――なるほど、そんな理由があったのですね。国連の決議ってすごく大変そうですね。

そうですね。日本は島国なので周波数が変わったりしてもさほど問題はないのですが、ヨーロッパなどの密集している国だと、周波数を勝手に変えてしまうと他国に干渉してしまうので良くないんですね。なので、新しい周波数を使用する場合は国連で全ての国の賛成が無いといけないんです。本当に大変です(笑)。

――それでは、ここからは「5G」が私たちにもたらすメリットを教えてください

まずは、なぜ「5G」を導入するようになったきっかけからお話ししましょう。
「1億総スマホ時代」と言う言葉を聞いたことがあるかも知れませんが、日本中の皆さんがスマホを持ち始めて、それまでより通信データ量が年間2倍くらい増えたんです。そこで2015年くらいに普及したのが「Wi-Fiオフロード」というもの。これは、月のデータ使用量が一定を超えると通信速度が落ちるキャップ制度(=通信制限)が導入されて、「家にWi-Fiを設置して、帰ってからはWi-Fiを繋ぎましょう」という内容です。
ですが、それでも4Gでデータ通信を使う人が多いので、「これではダメだ」と生まれたのが「5G」なんです。「5G」を導入することで、多数の端末を同時に繋ぐ大容量の通信が可能になります。

「5G」では“本当の意味”でのリモートワークが実現

――やはり「5G」という回線はすごいのでしょうか?

そうですね。例えば、スマホで道路を映すとリアルタイムでナビゲートしてくれるARマップだったり、腕に装着したウェアラブル端末からホログラムが出てきて体調や歩行距離を測ってくれたりするようになります。ライブコンサートやスポーツ観戦では、VRで観戦できて好みのカメラアングルを選択できたりしますね。

――今日の日本では考えられないんですが、「5G」に変わるだけで本当にそんなことができるのでしょうか?

なりますね。
今までは、携帯やスマホでインターネットにアクセスしてきたじゃないですか。「5G」くらいの能力を持っていると、携帯やスマホがインターネットに繋がるだけじゃなくて、現実空間と仮想空間が同じ空間に存在できるようになるんじゃないですかね。

――にわかには信じがたいですね……

既にメガネのような形状の「ホロレンズ」というものがあるのですが、実際に目の前にホログラムが出てきて、バイクの修理ガイドや手術のガイドが行えます。

一部の場所ではホログラムが使われているとなると、携帯電話が必要なくなってきますね。

例えば、今このようにPCを使用してオンラインで取材を受けていますが、だんだんそれもいらなくなって、私がそこにいるかのようにホログラムが目の前に現れて実際に対面して取材しているような形になるでしょう。
「低遅延」「大容量」の要素を持つ「5G」が導入されると、そういうことが可能になります。

――「5G」によって現実空間と仮想空間が融合したような感じになると言いましたが、それは近い未来でしょうか?

おそらく3年以内にはそうなっているんじゃないですかね。先ほど紹介した「ホロレンズ」は少し大きいメガネといったサイズなのですが、それでも良ければもうホログラムを使用してなにかをできます。これが手ごろなサイズになるくらいなら、3年以内で可能でしょう。
これは「5G」の一端に過ぎません。他にも、遠隔で機械を操作することがメリットの一つなんです。将来的に建設現場の重機などを遠隔で操作して、現場に人がいなくてもビルを建てられるようになります。農業も複数のトラクターを遠隔操作する「スマート農業」という働き方ができるんです。それがオフィスにいながら、でもね。
これに伴って、仕事の仕方もガラッと変わってきます。昨今はリモートワークが浸透してきていると思いますが、「5G」になると仕事の幅が大きくなって、今まではリモートでできなかったことができるようになります。

――今のお話を伺って少し気になったことがあります。新たな職業は誕生したりするのでしょうか?

どちらかと言えば、個人で出来る仕事の幅が増えるようなイメージですね。例えば私が大学の教授をしながら農場を購入してリモートで農業をすることで農家にもなれますし、あとは介護をリモートで行えるので、より仕事の機会が増えるのではないかと思います。
他にもタクシーを例に挙げると、自動運転のタクシーがたくさん出てくると思うので、ドライバーとして儲けるのではなく、複数のタクシーを運用して儲けるという時代になると思います。どこの街にタクシーを何台導入してどういう風に運営したらいいかを考えながらタクシーを操作していくんです。自ら経営からドライバーまで、全てやるようになるんじゃないですかね。

――すごいですね! 聞いている限りでは「5G」って世の中を良くするようなことばかりだと思うのですが、逆に阪口教授が懸念していることはあるのでしょうか?

それはですね、私も含めて人間が学び直す必要がある、ということですね。日本だと大学まで行くと領域を分けて専門教育みたいな形になっているんです。しかしその中には「社会を作り出そう」というような教育ってないですよね?
「5G」ってネットワークでいろんなものを繋いでしまうので、それによって造られる新しい社会みたいなものを創造していく必要があるので、まったく異なる分野を横断的に学ぶ必要があるんですよ。

「5G」を駆使して創り出す新しい社会・都市のカタチ

――「5G」によって進化する世の中について、今後どうなっていくのかを学んでいかないと取り残されてしまうんですね

今年4月に東京工業大学で新しい大学院「超スマート社会卓越教育院」を設立しました。そこでは、「超スマート社会卓越教育プログラム」と称して、例えば街に設置されたセンサーなどから送られる大量のデータを「5G」で人工知能へ繋ぎ、リアルタイムに解析することで、街や社会をより良いものにして行く、そうやって新しい社会や都市を創造していくための教育と研究を行っています。これからの時代にとって、俯瞰的な知識を持ってより良い社会を創れる人材を育成する必要がありますからね。

――なんだかすごくスケールの大きいお話ですね……もしかしたら今あるようなスマートハウスと言うIoT家電が溢れる家のように、全てがインターネットに繋がった街もできそうですね。

そうです。スーパーシティといってデータベース(地図)とセンサー(カメラ)とMEC(データを処理する装置)が連動することで、アクチュエータ(自動運転自動車)が街中を安全に走っているようになってきます。
「5G」を説明する時に「同時多数接続」「超高速」「低遅延」とよく言われていますが、スマホのために使うのではなく、本来は街をインターネットで繋ぐことこそが「5G」でやりたいことなんです。

――ありがとうございました。「1G」から「5G」まで為になるお話が聞けて楽しかったです。最後に一つだけ聞いても良いですか?

なんでしょうか。

――「5G」より上になるであろう「6G」は今後誕生しますか?

どうでしょうね。流行りを作りたい人達が「6G」と言っていますが、私はニーズがすごく重要だと思っています。
「5G」を使っていくうちに新しい社会がぼんやり見えてきて、「5Gじゃ足りないよね」「もう少しこういう機能が必要だよね」と、やりたいことが明確になってきたら声高々に「6G」と言えばいいかなって考えています。
これまでは、「4G」によってスマホができて、スマホによって新しいことが可能になりました。でも「4G」じゃ耐えきれなくなったので「5G」が出てきたんです。なので「5G」を使ってみて、新しい社会が見えてくれば自ずとわかるんじゃないでしょうか。

――まだまだ楽しみな社会になりそうですね。今回は貴重なお話ありがとうございました。

皆さん、いかがだったでしょうか。
今まで漠然としたイメージしかなかった「5G」のことがわかったんじゃないでしょうか。
それにしても、ホログラムだったりARナビだったり、スーパーシティ……。SFで夢見ていた世の中が3年以内に実現する可能性があるなんて、驚きですね。
それまでになんとか、正しい知識を学んでおきたいものですね。


関西一円で高品質な光回線を提供するオプテージでは、様々な事業に携わるお客さまの通信課題を解決するため、2019年より5Gサービスの実現を目指して活動しています。
2020年6月には西日本初となる「ローカル5G」の周波数を用いたオープンラボ『OPTAGE 5G LAB』を開設。LABでは、実際に稼働している5G用の無線基地局や5G端末(モバイルルータ)などを展示し、より身近に5Gの世界を体験いただけるほか、お客さまと共にさまざまな実証実験を行うことができる環境をご提供いたします。
オプテージの「ローカル5G」について詳しくはこちら

OPTAGE 5G

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。掲載日以降に内容が変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。

関連記事