『パズドラ』が作った通信ゲームの変換期 ~『あつ森』に凝縮された通信ゲームの歴史~【通信ゲーム・ヒストリア 最終回】

ここまで7回に渡って、ゲームと通信の関係性について、話してきましたが今回で最終回。最後は「スマホ」のゲーム、そしてブームを作った任天堂の最新ゲーム『あつまれ どうぶつの森』について触れていきたいと思います。

ライター:CLIP編集部

『パズル&ドラゴンズ』の登場で変わったスマホアプリ

『パズル&ドラゴンズ』の登場で変わったスマホアプリ

まずは前回の振り返りから。
ソーシャルゲームが「ネットを通じての人との繋がり」を手がかりに爆発的に広まり、基本無料+有料ガチャ(課金するたびにアイテムやキャラクターが一定の確率で手に入るしくみ)によりビジネスモデルを確立するまでをお話ししました。
これが、ざっと10年ぐらい前(2011年頃)のお話です。

しかし2012年頃を境にして、オンラインゲームやスマートフォンゲームのあり方がガラリと変わりました。
通信ゲーム業界全体を大きく揺るがしたのが『パズル&ドラゴンズ』であり、「ウェブアプリからネイティブアプリ」へのシフトです。

ウェブアプリとは、システムのほとんどを外部のサーバー(処理能力が高いコンピュータ)に任せ、利用者の端末はその処理結果を受け取って画面に表示するアプリのことです。昔のソーシャルゲームやカードゲームはこれに含まれます。

それに対してネイティブアプリとは、端末の中にあるプログラムにより動くアプリであり、オフラインでも動きます。初期の例としては、パチンコで鳥を打ち出して敵をやっつける『アングリーバード』などですね。

従来型のウェブアプリは複雑なプログラムは必要ないため作り手は量産しやすく、パワフルな能力を持つ高価な端末も必要ありません。そこにガチャの儲かりやすさとハマりやすさも加わり、しばらく大ヒットしたわけです。

しかしゲーム内容は単純なために飽きやすく、オンライン上で処理するためにレスポンスも悪い……。それにガチャが「儲けすぎた」ことで消費者庁の規制も入り、人気が下火になるのもあっという間でした。

そこに現われたのがネイティブアプリ、つまり単体でアプリを動かせる能力を持ったスマートフォン専用ゲームでした。
登場当時の『パズドラ(略称)』は凝ったパズルや美しいグラフィック、レスポンスの良さまでウェブアプリとは比べものになりませんでした。iPhoneやAndroidスマホが本格的に普及した(全般的に表現力も向上した)波にも乗って大ヒットを記録し、その後に『モンスターストライク』も続くことで、ネイティブへの流れを確かなものにしたのです。

それ以前の携帯電話と比べて画面が大きいスマホは、表示できるテキスト量が増えて画面演出の充実にも繋がり、シナリオ重視のゲームが開発しやすい下地も作りました。
『チェインクロニクル』や『グランブルーファンタジー』がシナリオ付きの大型イベントを初めて実装し、この流れの先に今や不動の人気を誇っている『Fate/Grand Order』が現われたわけですね。

『ポケモンGO』にいたる位置情報ゲームの歩み

『ポケモンGO』にいたる位置情報ゲームの歩み

モバイル通信ゲームのもう1つの進化は、位置情報ゲームと言えるでしょう。携帯電話やスマホの位置情報を活用するジャンルです。

その歴史は意外と古く、日本での元祖的な存在は2003年の『コロニーな生活』。
個人で開発した馬場功淳氏は後に会社を設立しており、それがゲーム名と同ゲーム内の仮想通貨である「プラ」を取った「株式会社コロプラ」なのです。

当時のケータイにGPSはなく基地局の位置情報を拾っていましたが、実際に動いた距離でゲーム内通貨を稼ぎ、それで自分だけの街(コロニー)を育てられる面白さにより大ヒット。訪れた場所だけでしか獲得できないお土産など、ご当地要素も盛り込まれていき、後の位置ゲー(略称)の原型を作ったのです。

そして「位置」と「地図」といえば、世界最大の企業がGoogleマップを擁するGoogleです。現在の代表的かつ世界的な位置ゲーである『ポケモンGO(Pokémon GO)』のルーツは、そんなGoogleの中から生まれたものでした。

『ポケモンGO』の開発・運営元であるナイアンティックは、元々はGoogleの社内ベンチャーでした。
第1作はGPSを有効にして街を歩き、登録された名所旧跡に近づくとプッシュ表示で教えてくれる『Field Trip』(2012年)。位置情報を元にして現実世界を楽しくし、ユーザーが名所を申請できる仕組みなど、後のナイアンティックが開発するゲームの方向性を作ったと言えます。

そして第2弾、世界を股にかけた陣取りゲームの『イングレス(Ingress)』。プレイヤーは2つの陣営のうちどちらかに属して、世界各地にある「ポータル」を奪い合うのですが、ゲームの舞台が現実の世界そのままであるGoogleマップの地図でした。

さらに転機となったのが、2014年にエイプリルフール企画として催された「Googleマップポケモンチャレンジ」でした。Googleマップ上で150匹のポケモンを探し出すイベントは大成功を収め、Googleと株式会社ポケモンや任天堂も急接近。マニアックな印象のあった『イングレス』のシステムと、子供にも大人にも広く愛されたポケモン達が出会うことで、多くのユーザー人気を勝ちえたのが『ポケモンGO』だったわけです。

こうした有名な原作+位置ゲーの組み合わせは、すでにスマホゲームの定番ジャンルとして確立されました。同じくナイアンティックからリリースされている『ハリー・ポッター:魔法同盟』や『ドラゴンクエストウォーク』など、歩くことで健康に、そして協力プレイを通じて人々の交流に貢献しているのです。

「通信ゲーム」の集大成『あつまれ どうぶつの森』

「通信ゲーム」の集大成『あつまれ どうぶつの森』

任天堂のゲームソフトは、30年以上前に初代ゲームボーイの『テトリス』で通信対戦が実現した頃から「通信」とともに進化してきました。莫大な数々のゲームを1つずつ振り返りたいところですが、時間がないようですので、エッセンスがギュッと凝縮されている『どうぶつの森』シリーズの歩みを見ていこうと思います。

第1作はNINTENDO64(N64)用で、1つのカセットで複数の人が遊べるというもの。基本的に家族みんなで1つの村をシェア。よその村に出かけることはできたものの、当時はまだネットの接続はありませんでした。
そのためコントローラパック(セーブデータを記録する装置)を持っていって他のN64に読み込ませなければなりませんでした。

それが第2作『どうぶつの森+』になると、本体のゲームキューブにゲームボーイアドバンス(GBA)を繋ぎ、GBAの中に作られた「島」(1人ずつ違う)のデータ交換もできるように進化。
ちなみに最新作でも好評な、自分で作ったデザインを作ったり他人のデータを読み込める「マイデザイン」は本作が初登場だったりします……。

1つ飛んで第4作の『おいでよ どうぶつの森』はニンテンドーWi-Fiコネクション初対応の作品でした。カセットやSDカード等を使わず、複数のニンテンドーDSを持ち寄ったり(近距離無線通信を利用するため)、インターネットを使って遠くの村に遊びに行ったり、直接通信によって「おでかけ」できるようになったのです。お互い行き来しやすくする「ともだちコード」の導入は、いわゆる「荒らし」対策(ともだちリストにいない人の乱入を避けられる)にもなっていました。

こうしたシステムに磨きをかけた第6作『とびだせ どうぶつの森』を下敷きにして誕生したのが、最新作の『あつまれ どうぶつの森』なのです。
マイデザインもついにインターネットに対応し、メトロポリタン美術館や有名デザイナーらが無料で服のデザインや絵画データを提供したことも話題になりましたね。
『あつ森(略称)』最大の進化は無料アップデートの配信、つまり「後からゲーム内容を追加したり、修正できるようになった」ことです。発売直後にはいなかったキャラクターが登場したり、季節ごとのイベントが追加されたり……。春の「イースター」イベント前に、地面を掘ると「たまご」ばかり出て化石が手に入らない! なんて事態も修正されたことは記憶にも新しいと思います(笑)。

離れた場所にいるプレイヤー達を繋げて「村」の間を行き来できるようにして、家にいながらゲーム内容が更新される。
そんな任天堂の通信ゲームの集大成とも言える「あつ森」が実売2000万本を超える大ヒットを達成した(※)のは、「通信ゲーム」が外出自粛などの逆風の中でもみんなを笑顔にしながら、着実に進化していく可能性のあらわれかもしれませんね。

※参照:任天堂 主要タイトル販売実績

最後に

今回を含めて、8回も続いたこの連載、いかがだったでしょうか。
30代、40代の方は「懐かしい」と思いつつ最新ゲームについて学べ、10代、20代の方は今のゲームが作られた歴史に触れることでより深く理解ができたのなら嬉しいです。
これからもどんどんと進化を続けるであろう「通信ゲーム」の世界。その時は改めて、お話しできればと思います。
これまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


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