システムの構築・管理・保守などを行うシステムエンジニア。近年は文系出身者も増えてききています。
AI ✕ データサイエンスなど、多くのビジネスの現場で求められる知識やスキルは、エンジニアが持つ能力と共通分部が多数あります。前回のインタビューでは、中井さんにその勉強法を教えていただきました。
そして今回、20代で葬儀会社からエンジニアに転職した三枝さん(仮名)にお話をお聞きししてきました。
三枝さんに語っていただいた内容は、エンジニアとして就職を考えている学生はもちろん、未経験でエンジニアへの転職を考えている人にも参考になりそうなことだらけでした。
ライター:CLIP編集部
葬儀社から未経験でエンジニアに転職。大手シンクタンクで常駐
――三枝さんはいまどんな仕事をされているんですか?
ネットワークエンジニアです。いまは大手シンクタンクの情報システム部門に常駐して、サーバの増設やキッティング作業をしています。三枝さんに語っていただいた内容は、エンジニアとして就職を考えている学生はもちろん、未経験でエンジニアへの転職を考えている人にも参考になりそうなことだらけでした。
あ、「キッティング」というのは、社員の皆さん一人一人のパソコンを使える状態にすることです。WindowsのOSや業務上必要なソフトのインストールをしたり、ネットワークやプリンタのドライバの設定をしたり。
その中で私がやっているのは、マスターPCと呼ばれるパソコンの設定を他のパソコンにコピーしていく「クローニング」という作業です。
――企業に勤めていると必ず恩恵に預かるお仕事ですね。エンジニアになったのはなぜですか?
エンジニアは「つぶしが利く仕事」と思ったのが大きいですね。実は僕、大学を中退しているんですよ。経済学部だったんですけど、あまり学校に行かなくなって……。しばらくはふらふらしていたんですが、電車が好きで駅員さんの仕事に憧れもあったので、鉄道会社の面接を受けるようになりました。
でもなかなか決まらず……。その後に縁があって葬儀会社で働くようになりました。
でも葬儀会社の仕事って結構ハードなので、疲れてしまって……。
そのとき24歳だったんですが、そろそろ将来を見据えて仕事をしようかな、と。ネットが繋がればどこからでも仕事ができる時代だし、ITに関わる仕事を選んだほうが可能性が広がるかなと思い、エンジニアに転職することにしました。
――では未経験でエンジニアを目指したんですね。最初は何をされたんですか?
とにかく何をしたらいいか分からなかったので、エンジニアの求人を探して面接を受けにいきました。そこで正直に「調べはしてみたんですが、幅が広すぎてエンジニアになるのに何から勉強したらいいか分かりません。教えてください」って面接官の人に聞いてみたんです(笑)。そうしたらその人がとても優しく教えてくださったんですよ。
「まずはITパスポート(※注1)の勉強をしたらいいんじゃないか。1カ月で取れるし、ITの全般的なことが分かるから。それとMicrosoftOfficeが少し使えればきっと大丈夫」と。
結果的にその面接は落ちたんですけど、道筋を教えてくれたあの面接官にはとても感謝しています。
※注1:ITパスポート……IT・経営に関する基礎的な知識が証明できる国家試験。通称「iパス」。
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/index.html
未経験からエンジニア資格を取得。勉強法は英語や免許と同じ
――いい出会いですね。そして面接で直接勉強法を聞く行動力もすばらしい。ITパスポートの勉強はどうやってされたんですか?
基本的には参考書を買って読んで、ネット上にある過去問をひたすら解いただけです。よく分からない単語は単語帳に書いて覚えました。いま思うと学校の英語や車の免許の試験でも同じ勉強の仕方でしたね。
RPA(※注2)とか経営の話とか、いままで触れてこなかった新しい分野を知れたので、過去問をやるだけでも楽しかったです。
あとは「MTA(マイクロソフト テクノロジー アソシエイト)」という初心者向けのエンジニア資格も取りました。
※注2:RPA……Robotic Process Automationの略。情報システム・経理・人事などのバックオフィス業務をソフトウェアに組み込まれたロボットに代行してもらう仕組み。
――お仕事で使用しているプログラミング言語は何ですか?
これといった使用言語はないんですが、業務ではWindows標準のコマンドプロンプト(※注3)やExcelのVBA(※注4)を扱うことが多いです。
運用やPCの設定をするだけなら基本的なコマンドを覚えればできますが、いまは会社の同僚にも勧められてLinux(※注5)の勉強も始めました。
※注3:コマンドプロンプト……WindowsPCに標準搭載されているツール。マウスは使えず黒い画面に白い文字をキーボードで入力してコンピュータにさまざま処理を施せる。
※注4:VBA……Visual Basic for Applicationsの略。ExcelやAccessなどで利用できるプログラミング言語。繰り返しの処理などを効率化できる。
※注5:Linux……無料かつオープンソース(誰でも改変可)のOS。無料であることなどから、サーバに利用されることも多い。
――ふだんはどんな勉強をされているんですか?
エンジニアの仕事をしていると、ネットで検索しても分からないエラーが出てくることがよくあります。キッティングの仕事を始めた当初はQiita(※注6)とか「プログラミングが得意なおじさん」のブログを見つけて参考にしていました。特定のプログラミング言語に特化したブログを見つけると、困ったときすぐ調べやすくなりますね。
あとは開発環境で調べたことを試しまくって、本番環境(※注7)で実行して……って感じで、なんとかやってきました。
そうしてプログラムが自分の力でできあがったときは、とても達成感があるんですよ。
※注6:Qiita……「プログラミングに関する知識を記録・共有するためのサービス」。エラー名などで検索するとエンジニアによる解決策の記事がヒットすることが多い。
https://qiita.com/
※注7:開発環境/本番環境……システム開発などではテストと修正を繰り返すため、開発環境(ローカルのパソコン内)→検証(テスト)環境→ステージング環境(本番に近い)→本番環境(実際にユーザーが使う環境)と段階的に構築を進めることが一般的。
Twitterや趣味でエンジニア仲間とつながる。勉強の日々は続く
――三枝さんにとって、エンジニアの仕事の面白みって何ですか?
1つ目は先程も言ったように、動くモノ・プログラムがつくれること。2つ目はいろんな会社の文化が分かることですね。いまは大手のシンクタンクに常駐していますが、その前は外資系コンサルで仕事をしていました。とてもきれいなオフィスで働きやすい環境づくりがされてたし、社員の人たちが皆さん優秀でとても刺激を受けました。
一方でインフラ系の会社に出向いていたときは転職者も少なくてスピード感もわりとゆったりだったりして、会社の文化の違いが見えてくるのは面白いですね。たまに、年配の社員の方に業界の裏話を聞いたりすることも(笑)。
――転職の面接で勉強法を聞いたり、そうやって人と仲良くなったり、三枝さんの行動力やコミュニケーション力は仕事に活かされているように思います。
確かにもともと人に話しかけたり質問したりするのにはあまり抵抗がないですね。プライベートでもTwitterで誰かと仲良くなって、そこから趣味が広がることも多いです。例えば、以前は競艇に全然興味がなかったんですけど、Twitterのフォロワーに勧められてレースを見てみたら、60代の選手が出ていることに興味を持って……。しかもその選手が勝ったりするんですよ。そこから一気にハマりましたね。
あとはたまたま飲食店で流れていた曲が気に入ってダンスゲームを始めたら、だんだん他のEDM(※注8)の音楽も好きになって、クラブに通うようになったり……。そこでつながった人がいまの常駐先の社員で、たまたま鉢合わせたときはびっくりしました(笑)。
※注8:EDM……Electronic Dance Musicの略で直訳すると「踊れる電子音楽」。主に電子楽器の電子音を中心にしたサウンドでクラブや音楽フェスで客を踊らせることを目的にした音楽のジャンルを指す。
――すごい偶然ですね! お話を聞いていると「つぶしが利く」とエンジニアになったそうですが、かなりいまの環境を楽しんでおられるのかなと思いました。
そうですね。あとから気づいたんですが、Twitterで仲良くなった人たちにもエンジニアが多かったりして、話を共有できるようになりました。それにエンジニアの仕事は、できることが目に見えて増えていくので、それが楽しいです。だからこそ、仕事をつづけられている気がします。
僕のように文系でプログラミングを全く知らなくても、勉強すればなんとかなるところもあるので、エンジニアの転職を考えている人には、ぜひともおすすめしたいです。
とはいえ、エンジニアに転職してみて、常に勉強しないといけない業界なんだな……というのは痛感します。どんどん技術がアップデートされるので、そのキャッチアップは必要で、そこがキツいと思う人もいると思います。いまはサーバサイドの技術を学んだり、使えるプログラミング言語も増やしたりしていきたいと思っています。
文系と理系の交差点にこそ価値が。多様なエンジニア像に期待
取材を通して、人とすぐ仲良くなれたり、物怖じせず質問できたり、新しいジャンルの文化も楽しめたりする三枝さんの性格はエンジニアの勉強にも活かされているなと感じました。
文系エンジニアについての言及で「文系のコミュニケーション能力はエンジニアでも活かせる」という理論に出合ったことがあります。ただ理系の人でもコミュニケーション能力が高い人はたくさんいるはず(文系にとってその逆も然り)。文系・理系という大きなくくりで自身を狭めて考える必要はないのかもしれません。
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズの伝記には「文系と理系の交差点に立てる人こそ大きな価値がある」という言葉に感動し、ジョブス自身そうなろうと決めたというエピソードがあります(ウォルター・アイザックソン:著、井口耕二:訳『スティーブ・ジョブズ I』/講談社)。
文系と理系のアイデアが仕事で結びつくこともあれば、三枝さんのように趣味がエンジニアの仲間とつながるきっかけになることもあるでしょう。多様なエンジニアが生まれてくると、Webや世の中のサービスはどんどん面白くなるのでは、と期待しています。
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