文系学部から新卒でエンジニアに。フランス語もJavaも勉強法は同じ?

企業の物流や生産・顧客管理、Webサイトなどシステムの構築・管理・保守を行う職種であるシステムエンジニア(SE)。近年では理系だけでなく文系でエンジニアになる人も多く、ある調査によればIT技術者のうち3割程度は文系学部出身とのこと(マイナビエージェント 調べ)。
文系出身者はなぜエンジニアになったのか。どんな勉強をしてきたのか。それがこれからエンジニアとしてのキャリアを目指す人や、IT知識を身につけたい人の参考になるかもしれません。
今回は新卒でエンジニアになった中井さん(文学部出身・30代)にお話を聞いてみました。

ライター:CLIP編集部

文系出身・中井さんはパリに語学留学後、なぜ新卒でエンジニアに?

パリに語学留学後、なぜ新卒でエンジニアに?

――中井さんは文学部出身。大学時代は海外に留学されたんですよね。

はい、大学4年生のときパリに留学しました。フランスには語学留学で行ったんですが、もともと高校のときジュール・ヴェルヌ(※注1)の小説が好きだったんですね。それで漠然とフランス文学を勉強したいなぁと。あとは高校時代、理系の科目や論理的思考が苦手だった……という理由もあります。

※注1:ジュール・ヴェルヌ……19世紀フランスの作家。代表作は『海底二万里』『八十日間世界一周』『月世界旅行』など。SF(サイエンス・フィクション)の開祖ともされる。

――「漠然」と言いつつ、留学するレベルまでフランス語を勉強されたのはすごいですね!

どうなのかな……。割と性格的にはやるなら徹底的にやろう、というところはあるかもしれません。要領が良くないというか、不器用だから余計に(笑)。

――フランス語や文学の勉強をガッツリされた後、エンジニアになったのはなぜですか?

なぜでしょうね……たまたま内定をもらえたから……というと怒られてしまいますが(笑)。就職活動の方向性がはっきりしていなかったんです。自分がやりたいこともよく分からないし、世の中にどんな会社があるのかも知らなかった。受けた企業はコーヒーメーカーの営業や航空会社の総合職、新聞社の記者……と業種・職種もバラバラでした。
で、すぐに内定をもらえたのが大手老舗メーカー企業のシステム部門、SE職だったんですよ。

研修でプログラミング言語「Java」を習得、大手コンサルに転職

研修でプログラミング言語「Java」を習得、大手コンサルに転職

――入社されてすぐエンジニアの仕事には順応できたんですか?

ありがたいことにその会社は、入社後1年間はずっと研修だったんです。研修が終わると社内の生産管理システムを構築する部署に配属されて、ひたすら手を動かしてました。もちろん大変なことも多かったんですが、研修のおかげでなんとかやっていけましたね。

その後は炎上(※注2)してるところのヘルプに回されることが多くてしんどかったんですが、逆にそのおかげでスキルアップしました。限られた時間でいかにリカバリ(回復)するかを考えて仕事をしていたので……。最終的にその会社には、7年間お世話になりました。

※注2:炎上……主にシステム業界の慣例的な言い方で、プロジェクトにトラブルが発生して品質が悪化したり納期が遅れたりし、メンバーが残業続きで対応せざるを得ない状況のこと。

――いまは業界大手のITコンサルファームに転職されていますよね。転職の理由は?

転職する前年にボランティアを経験して、やりたいことをやってもっと大きな舞台で人の支援をしたいと思うようになりました。結婚を考えてもいたので、年収アップもしたくて転職を決意しました。

結果的に転職できて、面接で高めに伝えた希望が通って年収も1.2倍ぐらいには上がったんですが、ハードルも上がってしまったので最初の年は大変でした……。

ただ目に見える成果を出したほうが納得してもらえるだろう、とあえて手を動かす仕事(プログラミング)を率先して受けるようにしていました。

今は仕様設計やディレクションの仕事が主ですが、1社目の研修と、転職後の1年も含めてたくさん手を動かした経験が今も支えになっています。

文系エンジニアの勉強法。プログラミング言語もフランス語も同じ?

プログラミング言語もフランス語も同じ

――中井さんは会社に入ってから初めてプログラミングを勉強したんですか?

そうですね。大学時代は文学とフランス語しか勉強していませんでしたから、新卒で入社した会社でまるまる1年間も研修を受けたのが大きいですね。みっちり朝から晩まで研修を受けたのが今となっては僕の大きな財産になっています。

――何のプログラミング言語を勉強されたんですか?

Java(※注3)ですね。いろんな開発案件に対応できるので、今でも仕事ではJava一本です。研修でオブジェクト指向(※注4)についても教えてくれたので、それ以外の言語を少し触るときも少しはやりやすく感じます。

※注3:Java(ジャヴァ)……基幹システムの多くで採用されているプログラミング言語。使用されている環境が多いこと、OSに依存せずソフトウェアを動かせることなどから世界的に人気のある言語(GitHub「The State of the Octoverse」より)。ゲームやアプリ、サーバサイドのプログラム、金融システムなど対応範囲が幅広い。

※注4:オブジェクト指向……プログラムのデータや処理手続きを1つの「オブジェクト(モノ、まとまり)」に格納し、そのオブジェクトを部品のように組み合わせてシステムを設計・実装しようとする考え方。Java以外にもRuby、PHP、JavaScript、Swiftなどのプログラミング言語の根本思想にある。

――大学のときのフランス語もそうですが、中井さんの「入ったからにはとことんやる」性格が随所に見えますね。

まぁ、そういうところがあるんでしょうね。理数科目は苦手意識があったけど、エンジニアには向いてたのかもしれません。エンジニアになって、昔よりは論理的に考えられるようになった気がします。プログラミング言語も「言語」ですから、フランス語の勉強で身についた勉強のやり方が通用した、というのもあるのかも。

――フランス語と共通する勉強法ってどういうものですか?

プログラミングの研修は、分厚い基礎的な本をとにかく読んでテストを受ける……。つまりは学校みたいな感じだったんです。そのために復習をしたり、繰り返し見直したりしました。あとはプログラミングに関しては、何度も作ったのが役に立っていると思います。フランス語でいうと、話してみるように……。プログラミング言語のルールを覚えて、プログラムを動かすため試行錯誤するのが面白いんです。

――普段はどんな勉強を心がけていますか?

AWS(※注5)とか、必要に応じて最新の技術はキャッチアップしています。通勤中に電子書籍で技術書を読むこともありますが、プログラミングに詰まったときに都度インターネットで調べることの方が多いかもしれませんね。自分と同じようなエラーに困っている人がいればいいけど、なかなか同じケースがないことも多い。なので、調べた情報を組み合わせて解決していきます。そういう自分なりのナレッジをつくる意味は大きいです。結局、自分の中で腑に落ちないと得た知識が次に繋がらない気がします。 

※注5:AWS……Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービス、Amazon Web Servicesのこと。サーバ構築やコンテンツ配信、データ分析など広い用途に活用でき、多くのWebアプリケーションやサービスでも利用されている。

文系・理系はエンジニアに関係ない。英語は大事

文系・理系はエンジニアに関係ない。英語は大事

――エンジニア業務のやりがいはいかがですか?

面白いですね。ある業界向けのインフラサービスを開発することになったとき、その立ち上げメンバーに選ばれたんです。企画やサービス設計、営業でヒアリングもするし、AWSに乗せてみるとか、新しい技術のチャレンジができるのは楽しいです。受託の場合はクライアントごとに新しい業界について学べるのもいいですね。

――今後のキャリアや、やってみたいことのイメージはありますか?

そうですね……仕事の上では新しい言語を覚えたり仕事の範囲を広げていきたいなと思います。あとは文学やフランス語の勉強をあんまり活かせてないので、何らかの形で活かしたいなって思ってきています。
最近、友人と読書会をやっているんですが、読んだ本を会話などでアウトプットすると、自分の中で腑に落ちる感じがあるんですよ。意外と学生時代はそれができていなかったなと。今の考え方やスキルがある上で、改めてまたイチから文学やフランス語を勉強したら、新しい企画が思いつくかもしれません(笑)。

――文系でエンジニアになりたい、転職したいという人に何かメッセージをお願いします。

自分もそうですし、周りを見ていてもあまり文系・理系のくくりはエンジニアには関係ないと思います。もちろん新しい技術やプロダクトの基礎研究とかは専門的な知識を大学で学んでいた方がいいかもしれませんが、今ある技術を組み合わせて新しいプログラムを作るのは、文系の人であっても充分できると思います。
あとは英語をまじめにやっておくのがおすすめです。プログラミング言語をネットで調べると、先端の情報の多くは英語圏のサイトにあるので……。僕も英語は勉強し直そうと思っています!

文系でも深堀りして勉強した経験、語学はエンジニアにも活かせる 

中井さんにお話を伺ってみて、エンジニアの仕事への適正は文系・理系も関係なさそうでしたが、「プログラミング『言語』のルールを理解し、『文(プログラム)』を読み、記号を組み合わせて書く」点は語学の読解、文章表現の勉強と実践に通ずるものがありました。

SEの職種、その企業ならではの仕事内容というのは入ってみなければ分からないことがほとんどです(SEに限らずですが)。そのとき活きてくるのは、「気になることは徹底して勉強する好奇心と手を動かす実践の繰り返し」なんだなと感じました。


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