通信ゲーム・ヒストリアもついに第6回を迎えました。今までは、家庭用ゲーム機やPCのオンラインゲームを取り上げていましたが、今回は携帯ゲーム機について、深堀していきましょう。
ライター:多根清史
ニンテンドーDSとPSPは「子供のための通信ゲーム」を開拓
前回のラストから少し遡る2004年末、2つの「通信ゲーム機」が登場しました。12月2日に任天堂が発売したニンテンドーDSと、ソニーが送り出したPSP(プレイステーション・ポータブル)です。当時は10年以上に渡ってゲームボーイシリーズを展開し続けてきた任天堂に対して、家庭用ゲーム機であるプレイステーションシリーズで覇権を握っていたソニーが挑むという「携帯ゲーム機戦争」として話題となりました。
これら2つは、どちらも無線LAN機能を備えていたことが共通しています。それ以前の携帯ゲーム機は別売りのアダプタが必要でしたが、メジャーな製品としては初めて“本体だけで”無線LANによって、やり取りができるようになったわけです。
2000年代序盤から中盤にかけての日本の「通信ゲーム」の主流とは、ひとことで言えば「お金がかかる、大人向けのゲーム」でした。たとえば前回お話しした『リネージュ』や『ラグナロクオンライン』といったオンラインゲームを遊ぶためにはパソコンが必要だし、まだ高価だったブロードバンド回線の費用も払わなければなりませんでした。
かたや携帯電話ゲームについても、やはり携帯電話の端末を買わなければ遊べず、そこから月々の通信料金の支払いも始まる……つまり、それだけのお金が払える社会人にプレイヤーが限られがちだったのです。
しかしながらニンテンドーDSとPSPの登場により、通信ゲームが基本的に(ゲーム機本体やソフトカートリッジを買う以外は)「タダ」になったのです。そもそも自前で基地局に繋がる通信回線を持っていないため回線代もかかりようがない訳ですが、ゲーム機同士がインターネットを経ずに互いに「通信」することで、新たな面白さを切り拓いていった。ひいては月額料金が払えない子供たちにも、通信ゲームの楽しみが広がっていったのです。
すれちがい通信により広まった「まさゆきの地図」……
まずニンテンドーDSには「DSワイヤレスプレイ」と「DSダウンロードプレイ」がありました。前者は人数分のDSワイヤレスプレイ本体とソフトを用意すれば対戦や協力プレイができる機能です。後者は人数分のDS本体と1本のソフトがあれば、複数のプレイヤーが一緒に遊べるもの(ソフトのない本体には無線経由でゲームの一部がダウンロードされ、一時的に保存されました)。
人数分のソフトが必要なワイヤレスプレイの方は「みんなが同じゲームを買うことはあまりない」ために遊ばれる機会は少なかったはず。そして、ダウンロードプレイも「最初にダウンロードする」手間がかかり、そう遊びやすいとは言えませんでした。
そしてDSにとって3つ目の通信機能が「すれちがい通信」です。同じゲームを入れたDS同士がすれ違ったときに通信が起こり、ゲーム内のアイテムを交換したりメッセージをやり取りしたりする機能ですね。こちらも「同じゲームを持っている」ことが必須のため、よほど大ヒットした「みんなが持ってる」ゲームでない限り実感できるチャンスはあまりありませんでした。
その数少ない「みんなが持ってるゲーム」こそが、初代DSの発売から5年後に出た『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』でした。前作から約4年振りの新作であり、発売から3日で300万本以上が売れた国民的ゲーム。ワイヤレスプレイにより多人数協力プレイもできたのですが、がぜん注目を集めたのがすれちがい通信によりもらえる「宝の地図」でした。
プレイヤーごとに専用のダンジョンが自動生成され、その一つひとつの内容が違うんです。高レベルのモンスターの比率が高かったり、効率よく経験値が稼げるものもありました。それら「宝の地図」はすれちがい通信により広まったのですが、その中にとびきりお得な「まさゆきの地図(まさゆきはプレイヤーの名前)」があったわけです。
おかげで、当時の秋葉原の量販店等ではすれちがうためにプレイヤーが集まり(それ目的ならすれちがいではない気もしますが)、かくいう筆者も地図を手に入れた友人と待ち合わせして分けてもらった思い出があります(笑)。
「一狩りいこうぜ!」の通信ゲームを流行らせた『モンスターハンターポータブル』
かたやPSPにも、DSの「ダウンロードプレイ」に相当する「ゲームシェアリング」機能もありましたが、DSと同じくあまり機能せず……。
ですがPSP世代の中で最も印象に残り、そしてPSPを代表する通信ゲームといえば『モンスターハンターポータブル』シリーズでしょう。
もともと原点となったPS2用の初代『モンスターハンター』が発売されたのは、2004年のことです。モンスターを狩り、素材をはぎ取り、さらに強い武器や装備を作ってより強大なモンスターに挑む――そんな「ハンティングアクション」の原型とともに、初代から4人同時のマルチプレイは実現していました(ちなみに生肉を焼き上げたときの「上手に焼けました」も初代から)。
ただし別売りのネットワークアダプタや、ブロードバンド回線も必須でした。この連載でも触れてきた『FF11』や『ラグナロクオンライン』(どちらも2002年開始)といったオンラインゲームの波に乗る形で投入されたこともあり、動作環境のコストや年齢層も高めに設定されたのかもしれません。
そうして一定の支持を勝ち得た『モンスターハンター』でしたが、本格的にブレイクしたのはPSPに移植された携帯ゲーム機版の『モンスターハンター ポータブル(以下MHP)』が130万本ものヒットを記録してからです。
初代の据え置きゲーム機版ではネット環境を揃えることが高いハードルとなっていましたが、PSP版はそれが一挙にクリア。携帯ゲーム機だからこそ「持ち寄る」ことが可能となり、本体に内蔵された無線LAN機能のうち「アドホックモード(PSP同士が通信するモード)」により友達のPSPと接続し、通信費を掛けずに協力プレイができるようになったのです。
そして一つのピークに達したのが、2作目のアップグレードとなる『モンスターハンター ポータブル 2ndG(以下MHP2G)』時代。それ以前のシリーズ集大成だった本作は学生からサラリーマンまで熱中し、「一狩りいこうぜ」のキャッチフレーズ通り喫茶店やファーストフード店が「集会所」と化して4人プレイに興じる人たちが続出しました。
本作はニンテンドーDSよりもソフトウェアの品揃えが弱い印象のあったPSPを人気ハードに押し上げ、本体の売上を牽引していく快進撃ぶりでした。サードパーティー(ソニーではないゲームソフト会社)であるカプコンのソフトなのに、PSP本体に同梱された「ハンターズパック」も発売されたほどです。
何よりもMHP2Gのお手柄は、任天堂がゲームボーイからDSまでしっかり捉えていた10代のゲーマーたちをPSPに引き込んだこと、との見方もされています。『ポケモン』を遊んでいた小学生達が中学生になるにあたり、任天堂ハードを「卒業」してちょっと大人の雰囲気がある「一狩りいこうぜ」に進学したのかも、と言れたものです。
ほかPSPの「通信」における足跡といえば、他社のゲーム機よりも先がけて、ゲームソフトのダウンロード販売を始めたことです。歴代のPSPには、ROMカートリッジに当たるゲーム記録媒体として「UMD」という光ディスクが使われていました。PSP本体にも、これを読み込むUMDドライブが搭載されていたのです。
が、2009年10月に発売された新型のPSP GoではUMDドライブを廃止。これに伴って発売済みのPSP向けソフトのダウンロード販売が開始され、小売店を介さずにお客に直接ゲームを販売するものとして、ゲームショップの反発が聞こえてきたこともあったようです。
2020年現在から振り返ると、PSP Goの路線は正しかったのですが、いかんせん時期が早すぎて市場に受け入れられたとは言いがたい結果となりました(発売から2年後の2011年には出荷終了)。いち早くインターネット対応したドリームキャストと言い、「通信ゲーム」でフロンティアを切り拓くゲーム機は報われにくいのかもしれません……。
次回は、いよいよ「ソーシャルゲーム」と「スマホゲーム」を扱う予定です。お楽しみに!
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