「McAfee」に聞く、アフターコロナのインターネットに関わる生活様式とその危険性

4月の緊急事態宣言以降、WEB会議システムやキャッシュレス決済をはじめ、非対面型の生活様式が定着しはじめました。この先、インターネットの通信速度が見直され、オンラインコンテンツが拡充されると、インターネット上で実現できることが増え、ますます便利な社会になることが予想されます。
しかし便利になるだけではなく、そこに潜む危険性にも目を向けなければなりません。

今回、今後の社会を快適に過ごすうえで要となるインターネットと、そこに潜む危険性、私たちの個人情報を守る方法について、インターネットセキュリティ企業「McAfee」の執行役員本部長である青木大知さんにお聞きしました。

ライター:CLIP編集部

インターネットはもっと速く、便利に進化を遂げる

――コロナ禍において、インターネットの需要はどれだけ伸びましたか?

世界規模でインターネットの需要が増えた

マーケティング企業「Global Web Index」 が今年3月に行った調査によると、「スマートフォンの利用時間が伸びた」と回答した人は70%。次いでノートパソコンの利用は40%、デスクトップパソコンの利用も32%の人が、触れる時間が増えたと回答していました。コロナ禍においてリモートワークや非対面サービスのニーズが拡大したことで、世界規模でインターネットの需要も増えたのでしょう。

※アメリカ1088人、日本1079人をはじめ、13カ国1万2845人(16歳~64歳)が対象

――9月に就任した菅内閣総理大臣の指揮の下「デジタル庁」の創設が検討されるなど、今後ますます社会全体のデジタル化が進んでいきそうです。青木さんは、今後インターネット技術がどのように進歩するとお考えですか?

インターネットが注目され始めたのは1990年代半ばと、まだその歴史は短いです。当時の通信速度はかなり遅く、スマ―トフォンで動画を視聴するのが当たり前の現代では考えられない速度でした。現在、超高速通信と超多数同時接続がかなう「5G」が登場して話題になっていますね。その導入に際して、日本では価格競争の話になりがちですが。しかし世界各国では、この技術をどう活用するのかという、実用面の話し合いをしているんです。実際に世界最大級のモバイルカンファレンスであるMWCに参加した時に、そう感じました。もちろん価格も大事ですけどね(笑)。
インターネットはもはや、電気やガス、水道と同じくらい私たちの生活に必要不可欠なインフラです。これからインターネットの通信速度はさらに速くなり、様々なサービスが遅延なく提供されるようになるでしょう。日本ではこの最新インターネットをいかに地域差や年齢差なく浸透させていくかが問われると思います。

――確かに、インターネットは私たちの生活と切り離せない存在ですよね。2020年に入って「5G」が登場したことで、スマホをはじめとする各種モバイルの通信速度も改善されそうですね

実は、一般ユーザーの約80%がモバイルを経由してインターネットを使用しています。それはモバイル端末を使っているだけではなく、モバイルWi-Fiルーターを使ったり、スマホとノートパソコンをテザリングしたり、テレワークが増えてよりモバイル回線を利用することが増えたのだと思います。

現状のモバイル回線は不安定な部分がある

テザリング状態でオンライン会議を行ったとき、通信が不安定で声が途切れて、相手から「すみません、聞き取りづらくて……」と言われた経験はありませんか? 現状のモバイル回線は不安定な部分があるんです。それに最近はパソコンを持たない人も多いため、5Gの導入によるモバイル通信の高速化とそれに対応したデバイスの普及は必須と言えるでしょう。

――通信速度が改善されて、インターネット技術が進歩すると、社会にはどのような影響がありますか?

端的に言うと、インターネットを使ったサービスの連携が増え、もっと便利な社会になります。
具体的には、キャッシュレス決済やポイント・マイレージ貯蓄などが1つのアカウントで完結するようになるのではないかと考えています。コロナ禍で利用者が急増したクラウドやWEB会議システムも今後は定着するでしょう。これまで書類で行っていた各種申請や請求などがオンラインに切り替わり、クラウドでそれらのデータを社内やクライアントと共有。WEB会議システムでは商談に限らず、オンラインの教育やライブイベントなど、コンテンツが拡充すると私は考えています。

――なるほど。仕事面でもプライベート面でも、もっとデジタル化が進むと言うことですね

そうですね。コロナ禍での生活の中で、動画や音楽のストリーミングサービスの広告をよく見ませんでしたか? あれは私生活を充実させるデジタルコンテンツとしてすでに定着しているサービスだと思います。
現状、アーティストのライブ配信ではアクセス集中などの理由から、低画質でなければストリーミング再生時に遅延が発生したり、映像が止まることもあったと思いますが、インターネット技術の進歩によって滞りなく視聴できるようになると思いますよ。

――確かにそれは快適ですね。仕事面でもクラウドやWEB会議システムが浸透すれば、今後はリモートワークや、大手人材派遣会社のように本拠地を地方に移す企業が増えそうですね

今後はリモートワークや、大手人材派遣会社のように本拠地を地方に移す企業が増えそう

提供するサービスが非対面で問題ない企業は、メインをリモートワークに切り替えるかもしれませんね。
都心に集中している企業の本拠地が地方に分散されるかという点では、「TOYOTA」が面白いことを発表していました。今年1月にラスベガスで開催された電子機器の見本市「CES 2020」で、静岡の工場跡地に最先端のテクノロジーを実証する実験場「コネクティッド・シティ」を作るというのです。
そこでは5Gや人工知能(AI)技術、自動運転などを導入して超先端のデジタル都市となるように計画しており、社員とその家族を住まわせて自社の技術や暮らしやすさを調査していくのです。都心と比べると土地代や維持費も安いですし、インターネットやデジタルの先端技術を取り入れることで、地方でも快適に働けてのびのびと生活を送ることができると実証されれば、あえて地方を選び、その分設備に投資する企業も出てくるでしょうね。

狙われる個人情報……身近な人とタッグを組もう!

――この先もインターネット技術は向上するとのことですが、ここ数年でも目ざましい発展を遂げていると感じています。便利になった分、落とし穴があるのではと心配で……

確かに、よほどのデジタルマニアでなければ、テクノロジーの進歩についていくのは難しいと思います。しかしインターネットの危険性について考える時は、まずインターネット自体がどういうものか知ることが大切です。
ご自身が暮らす街に置き換えると分かりやすいと思います。安全な場所もあれば、治安の悪い場所もある。優しい人もいれば、見た目は良い人でもおっかない人もいますよね。「インターネット」という街も同じで、善人と悪人が共存し、訪れて良いサイトと悪いサイトがあります。このことを常に頭の片隅に置いていてくださいね。

――数年前と現在でインターネットに潜む危険性はどのように変わりましたか?

10年前であれば、パソコンを持っていないとインターネットを使うことはできなかったと思いますが、「1億総スマホ時代」とも言われるようにスマホの普及によってネット利用者が低年齢化しています。さらに、子どもや孫の勧めでスマホやタブレットを持ち始める高齢者も増えています。
インターネットがどういうものか知らないうちに迷惑メールのURLを開いてしまったり、何の疑いもなく危険なWEBサイトにアクセスしたりしてコンピューターウイルスに感染し、スマホやタブレットが人質にされるケースは以前からありますが、やはり後を絶ちません。ただこれまでは、こういった文面の怪しいメールやSMS、URLに近づかないように注意していれば、ウイルスなどのマルウェアに感染することはありませんでした。しかし最近は攻撃先が大量の口座・クレジットカード情報を持つ企業やサービスの提供元になっています。そこで手に入れた個人情報がダークウェブで売買されたり、金銭が勝手に不正利用されたりするのが脅威となっているんです。

――自分で管理できないサーバーから個人情報が漏れるって怖いですね……。私たち一般ユーザーが気を付けるべきことはありますか?

企業やサービスの提供元から個人情報が漏れるのはどうしようもできないのですが、個人としてはやはり怪しいメールやURLには近づかないことです。
また、この先キャッシュレス決済やポイント・マイレージ貯蓄のアカウントが1つに統合された時、突破されやすいログインIDやパスワードを設定するのもかなり危険です。特にパスワードは他にもアカウントが複数あると覚えきれず、つい安直だったり、他サイトで使用したりしている暗号を設定しがちですよね。必ず複雑なログインIDやパスワードを設定するように心掛けてください。外出先で何らかのIDやパスワードを入力する時、例え誰かに盗み見されたとしても、解読が難しいパスワードであれば悪用は避けられます。とはいえ、何の法則性もないアルファベットや数字を羅列しても頭に残らないですよね。

――サイトによってパスワードを変えると覚えられないので、1つのパスワードを使い回していました……。どうしたらいいでしょうか?

サイトによってパスワードを変えると覚えられない

そんな時は、たくさんのログインIDとパスワードをまとめて管理できる「パスワードマネージャー」を利用するのがおすすめです。セキュリティソフトの中でもあまり知られていない機能ですが、大事な個人情報を守ってくれて、スマホからでも確認できるので便利なんですよ。しかしこんな機能があることも、使い方についても分からないという人がほとんどだと思います。こういった疑問や何か不安なことがあるのであれば、ご自身が契約しているセキュリティ会社のサポートへ連絡するといいでしょう。ちなみに「McAfee」のセキュリティソフト利用者であれば無料でサポートセンターにインターネットに関する疑問やトラブルの解決方法について相談できるので、遠慮なく聞いてくださいね。ご自身の個人情報を守るためのちょっとしたテクニックも学んでいただけると思います。

――なるほど、早速パスワードマネージャーを利用してみたいと思います! ネット環境についてですが、スマホやノートパソコンをホームルーターに接続している時は、個人で契約しているセキュリティソフトが働いて安全と言えると思います。その範囲外である外出先でインターネットを利用する時に、「怪しいURLはクリックしないこと」以外で気を付けるべきことがあれば教えてください。

公衆の無料Wi-Fiなど、安全が確保されていないネットワークを利用する時に疑わしいアクティビティをブロックし、個人情報を保護することができる「VPNソフトウェア」を導入することも有効です。また、ソフトウェアやアプリを更新して最新の状態に保つことや、アドレスが「https」から始まるWEBサイトを利用することなども、安全にインターネットを利用する方法の一つです。

――先ほど子どもや高齢者がスマホやタブレットに触れる機会が多くなったとありました。インターネットの知識があまりない人にモバイル端末を持たせる時に気を付けたいことは何ですか?

端末を購入する前に利用時間や条件を決めておき、普段から家族や友人など身近な人とインターネットについて話し合う「インターネットーク」を行いましょう。子どもや高齢者に「どんな動画を見ているの?」「どんなWEBサイトを検索しているの?」と聞くのもいいと思います。
セキュリティソフトやスマホのサービスで怪しいWEBサイトにアクセスしないように制限することはできます。ですが、一方的に設定するのではなく、「なぜこうしたフィルタリングが必要なのか」を話し合うことが大切です。ただし、「インターネットは危険だ」と脅すのではなく、「使い方によって良くも悪くも働く」ということを教えてください。あくまで「インターネットを使いたい」「動画を見たい」という意思を尊重し、双方が納得できるフィルタリング方法を見つけてくださいね。

――コロナ禍では、子どもや高齢者が持つデバイスのセキュリティに関し、御社にどのような問い合わせがありましたか?

海外のデータですが、7月にわが社のセキュリティ製品を利用している2000人を対象に調査したところ、子を持つ保護者の64%がここ3~4カ月の間に、子どもの閲覧するサイトを制限することができる「ペアレンタルコントロールサービス」の利用をスタート。また、インターネットセキュリティに対する不安から、43% がVPNを、42%がパスワードマネージャーを使用するなど、コロナ禍ではこれまで使われていなかった機能が注目されるようになりました。

テクノロジーの進歩についていける「サポートサービス」が重要

――今日お話を聞いて、近いうちに頭の中の想像図でしかなかったデジタル社会が実現されようとしていることが分かりました。インターネットセキュリティ企業として、今後どのような取り組みをしたいとお考えですか?

インターネットテクノロジーの進歩によって便利な社会が提供されるのは良いことですが、当社としてはサポートサービスを充実させることも必要だと考えています。インターネットがいくらハイスペックになったところで、ユーザーが使いこなせなければ意味がありません。困った時に頼れるパートナーでありたいですね。
また、今のようなインターネットセキュリティのパッケージ製品は、インストールした後にいろいろ設定をしなければなりません。これを全て理解することも難しく、どんな機能があるのかをユーザーが把握しきれず、利用されていないサービスもあるのが現状です。
そこで、面倒をとことん無くしていくことが課題だと思っています。例えば、最初の設定を省き、危険性のあるURLをクリックしてしまった時に初めてブロック機能の設定画面が開くようにしたり、パスワードを設定する時に破られにくいパスワードを提案してパスワードマネージャーに保存したり、ユーザーが必要な時に必要なサービスがカスタマイズできる製品を今後開発していきたいと考えています。インターネットセキュリティに精通した我々「McAfee」が良き相談相手となり、面倒な設定も肩代わりする。そんな風にユーザーとコミュニケーションを取りながら構築していくことが理想ですね。

まとめ

アフターコロナの世界では、私たちはインターネットともっと密接な関係を築いていると考える青木さん。このインターネットの進化でもたらされる快適な生活の裏には、今よりも大きな脅威が待っているのです。それに備えて私たちはインターネットについて、そして自分を守るために、しっかりと考えなければなりません。
「McAfee」では今後のことを考え、面倒な部分を排除した製品の開発を目指しています。ユーザーが必要な時に、必要なセキュリティが起動する。私たちのことを守るため、より快適な生活を過ごすため、変わっていくインターネットセキュリティに今後も注目です。



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